私の生きる場所

來雅→柚の席の前の人♂︎
結梨→柚の後ろの席の子♀





柚side
中学校の入学式の日。
人生初めての制服は、少し重くて、鏡に映る自分が大人っぽく見えた。
初めての事ばかりで心が弾んでいた。
「今日からまた新しい私の物語が始まる」
そう思っていた。

教室に入ると、あちこちから笑い声が聞こえた。
私も負けてられない。勇気を出して、後ろの席の子に話しかけ、名前を教えあって、何気ない共通点で喜んで、
気づけばたくさんの友達が出来た。
休み時間は、友達と遊んだり話したりして、
放課後は、美術部に行って友達と寄り道をしながら帰って、
「中学めっちゃ楽しい」なんて思っていた。

ある日、ふと気づいてしまった。
ずっと目で追ってしまう人がいることに。
教室でその人と目が合うたびに、
心臓が早くなる。
プリントを渡す時、來雅の手に少し触れただけで、
胸が熱くなった。
「もしかして、これが恋ってやつ···?」
好きだと、自分の気持ちに気づいた瞬間、
世界が少しずつ鮮やかになっていった。
私は、緊張しながら來雅に話しかける。
その日を境によく話すようになっていった。

けれど、その変化がだめだったのかもしれない。
私の周りが瞬く間に壊れ始めた。
私は、來雅が気になっていることを結梨に話した。
私は知らなかった。結梨の好きな人が來雅だったなんて。それを機に結梨との会話が、どこか噛み合わなくなっていった。
私が話しだすと、さっきまで笑っていたはずのみんなが黙りだす
まるで私の周りだけ時間が止まったかのようだった。
「最近変わったよね」
「それな!前の方が良かったよw」
冗談みたいな言葉でも、私の心は堪えた。
気づけば、私はグループのみんなとの距離に溝ができていた。
一緒に居るけど、いつも置いていかれているような気持ちになった。
そして、また私への悪口が始まった。

聞こえないふり、気にしていないふりをする。
だけど、
自分の名前がヒソヒソ声に入っているだけで、
足が震えた。

朝、目が覚めると、制服が見えた。
学校を連想させる物を見るだけで、息が苦しくなった。
それでも、鉛のように重たい身体を起こして、学校に行く準備をする。
気に入っていた制服の重みがいつしか私を息苦しくさせるものになっていた。
言えなかった。

「つらい」
「学校に行きたくない」

そんなことを言ってしまえば、家族に心配をかけてしまう。
そんなの迷惑だ。
「学校楽しい?」
そう聞かれるたび
に私の心がぎゅっと痛くなりながらも笑う。
「楽しいよ!」
嘘をつく度に私の何かが壊れていった。
学校にも家にも偽りの自分でしか居れない。

そんな私の生活で唯一私が私で居られたのは、部活だった。

自分の好きなことに熱中できる場所。
楽しくて、あっという間に過ぎる時間。
必要とされている。

それだけで、
「まだ大丈夫」そう思えた。
でも、夜になると
一気に不安が押し寄せてきた。
自分を責めることしかできない。
――私のどこがいけなかったのかな。
――もっと何かできたかもしれないのに。
泣きたくなった。
でも泣けなかった。
家族に聞こえたら、心配させてしまうから。
自分の中に閉じ込めた。

來雅side
後ろの席の彼女は、すごく楽しそうに笑っていた
友達も多くて、クラスの中心にいるようだった
そんな彼女から目が離せなくなっていた。

だから、ある日気づいた。
彼女の笑顔がいつもと違っていることに…
目がわらっていなかった。
心配になりながらもいつも通りに過ごした。
部活が終わって、少し寄り道をした僕の前には僕の目を奪った彼女がいた。
気づけば、彼女を追いかけていた。
「大丈夫?」と聞くと
小さなか弱い声で
「だいじょうぶ」と返ってくる。
だいじょうぶと言っている彼女の笑顔が歪んでいるのを、僕は見逃さなかった。

ある放課後
思い切って彼女に言った。
「無理してるでしょ」
その瞬間彼女は膝から崩れ落ちた。

「何が悪かったのかな」
「またみんなとたくさん笑いたいよ」
「つらいよ」

泣きながら、何度もそう言っていた。
あぁ、この子は優しいから一人で抱え込んでいるんだ。彼女の心は壊れようとしているんだ。
とおもった。
「柚は、何も悪くないよ」
「つらいなら、我慢しないでたくさん泣きな」

そう言うと、彼女は初めて声を出しながら泣いた。
そして、僕は分かった。この子を守りたい。
人思いで優しい彼女が好きだと。

泣きじゃくる柚の手を握りながら告白した。
彼女は、震えながらこう言った。
「こんな私でいいの……」
答えは、決まっている。
「こんなじゃない。そんな柚が好きなんだ。」

柚side

好きな人に告白されて嬉しかった。
だけど彼がそばに居ても、学校がすぐに楽になるわけではなかった。
それでも、
「今日はどうだったの?部活なにしたの?」
そう聞いてくれる人が居るだけで、
明日も学校に行こうと思えた。

私は、まだ未熟で強くない。
まだ、友達と上手くやれるか不安だ。

でも、それでも、
1人で全部を抱え込まなくてもいいと知った。
家族に心配させたくなくて嘘をついて笑っていたわたし。
でも今は、支えてくれる理解してくれる強い味方がいる。
彼氏である來雅という存在に救われた。

世界の全部が敵になったとしても、
「ここに居ていい」と言ってくれる人がいる。
すごく心強かった
それだけで、私は今日も生きている。

傷つく日も、泣く日だってあるけど
それでも、私は前を向いて進んでいく。
私も誰かの支えになれる人になりたい!そう強く思った