葉山くんは私の前でだけ忠犬

学年の教室がある廊下ではモーゼのごとく生徒たちが道を開け、私は身を縮めて歩くけど、何も気にしてない様子の葉山くんは「席替えまで『待て』出来ない〜」なんて言ってくる。


ていうか、いうこときくって言ったばかりなのに……。


教室に入ってからも、まだ文句をたれる葉山くん。

私は葉山くんを自分の席、廊下側の一番後ろに座らせてから、きゅっ、と眉間に皺を寄せて、モモにするように少しだけ強く肩をポンと叩いた。


「は、葉山くん……!」
「なに〜?」
「イイコにしてないと……次の席替えのとき、オネガイしてもらわないよ?」


おそるおそる、でもちょっとだけ強く言ってみる。

それでもモモは全然いうこときかなくて、尻尾振って知らんぷりしてるけど……。

葉山くんはいつも細めてる目を一瞬、ほんとに一瞬だけ見開いてから、嬉しそうににんまりと笑った。