葉山くんは私の前でだけ忠犬

「……俺が痛いと千代は嫌なのぉ?」
「嫌……だよ」
「そっかそっかぁ〜!」


何がそんなに嬉しいのかわからないけど、葉山くんはそれはそれはにっこりと目を細めて笑う。


「ねぇ、千代……じゃあごほーび、ね?」
「う……あの、それは別……」
「ハグならいいでしょ?ナデナデの延長じゃん?」


延長……なのかなぁ?

でもよく考えたら、さっきも腰にしがみつかれて、ハグみたいなものだった……?

それならハードルも低い、かな?


「じゃ、あ……その、ちょっとだけ、だよ?」
「うんうん」


両手を広げて待ち構える葉山くん。

そう構えられるとハグし辛いけど、パッとやってしまったほうが気持ちが楽かもしれない。


私はおそるおそる近付いた。

すると、葉山くんが私を腕の中にすっぽりと収める。

私は背中を優しく撫でてあげた。


モモを抱きしめるときとは、当たり前だけど違う。

少しだけ香水の匂いにまじって、砂のようなほこりのようなにおいがする。


「喧嘩……しちゃダメ、だからね」
「ん〜……自分から吹っかけるのはやめる〜」