「な、なんだよ!」
背後で男の声がした。
あたしはようやく振り向いた。
四十代くらいの男が、驚いた顔で久世さんを見ている。
一見普通のサラリーマンだ。
「何もしてない! 混んでたから当たっただけだ!」
「こちらで確認しています」
三枝さんが男の腕を取る。
「離せよ!」
男が身体を捻った。
榊原さんがすぐに反対側へ回る。
「暴れないでください!」
車内が一気にざわついた。
乗客たちが何事かと振り返る。
あたしはその場から動かなかった。
あたしの隣には久世さんがついてくれた。
今のあたしは、被害者。
取り押さえるのは、あたしの仕事じゃない。
その時だった。
人混みの向こうで、赤い帽子が動いた。
さっきまでこっちを見ていた男。
その手には、スマホが握られている。
あたしと目が合った。
男の顔色が変わった。
一歩、後ろへ下がる。
視線だけが、開いているドアへ向いた。
――逃げる!
「待って!」
男が乗客を押し退けた。
人の間を無理やり抜け、ホームへ飛び出す。
「大山先輩!」
あたしは男を指さした。
「赤い帽子の男、捕まえてください! 盗撮されました!」
大山先輩が振り向く。
次の瞬間、赤い帽子を追ってホームを駆け出した。
背後で男の声がした。
あたしはようやく振り向いた。
四十代くらいの男が、驚いた顔で久世さんを見ている。
一見普通のサラリーマンだ。
「何もしてない! 混んでたから当たっただけだ!」
「こちらで確認しています」
三枝さんが男の腕を取る。
「離せよ!」
男が身体を捻った。
榊原さんがすぐに反対側へ回る。
「暴れないでください!」
車内が一気にざわついた。
乗客たちが何事かと振り返る。
あたしはその場から動かなかった。
あたしの隣には久世さんがついてくれた。
今のあたしは、被害者。
取り押さえるのは、あたしの仕事じゃない。
その時だった。
人混みの向こうで、赤い帽子が動いた。
さっきまでこっちを見ていた男。
その手には、スマホが握られている。
あたしと目が合った。
男の顔色が変わった。
一歩、後ろへ下がる。
視線だけが、開いているドアへ向いた。
――逃げる!
「待って!」
男が乗客を押し退けた。
人の間を無理やり抜け、ホームへ飛び出す。
「大山先輩!」
あたしは男を指さした。
「赤い帽子の男、捕まえてください! 盗撮されました!」
大山先輩が振り向く。
次の瞬間、赤い帽子を追ってホームを駆け出した。



