海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜

夕飯を食べ終え、二人でコーヒーを飲んでいると。海人が、ふと思い出したように口を開いた。

「絵のモデルをしてくれないか?」

「え?」

思わず固まる。

「ま、まさか…ぬ、ヌードですか?」

恐る恐る尋ねると、海人は呆れたような目を向けた。

「そんなことするわけないだろ」

そして、さらりと続ける。

「誰が美月の身体を、他の奴に晒すか」

「あ、そ、そうですか」

さらっと言われた言葉に、頬が熱くなる。

「新しい依頼でな。水族館のナイトアクアリウムのポスターに使いたいらしい」

「それは素敵ですね」

夜の水族館。きっと、幻想的なポスターになるんだろうな。

「アクアリウムコスメを気に入ってくれた水族館の人からの依頼でな」

「嬉しいですけど…また忙しくなりそうですね」

私は心配になって、隣に座る海人を見る。

「ちゃんと休まなきゃダメですよ」

すると、突然ぐっと身体を引き寄せられた。

「わっ…」

額に、柔らかなキスが落ちる。

「大丈夫だよ」

海人は何でもないことのように言った。

「美月がいれば、それだけで睡眠の質が上がるからな」

「私、抱き枕とかじゃないんですけど」

思わず頬を膨らませる。

「あ。でも、体温は高いって言われますよ」

少し考えてから付け加えた。

「冬はいいけど、夏は暑いって」

「確かに」

海人が私を抱き寄せたまま、満足そうに頷く。

「あったかくて、触り心地もいい」

「へんたい」

じとっと睨むと、海人は小さく笑った。

「はは。その冷たい目、いいな」

「もう」

この人は、まったく。会社では、あんなに隙のない顔をしているくせに。二人きりになると、直球すぎるんだよな。

「ほら、おいで」

そう言って、海人が腕を広げる。

「今日、理不尽なクレーム対応をしていただろう」

「なんで知ってるんですか?」

思わず目を丸くする。

「たまたまだ」

「絶対、たまたまじゃないですよね」

頬をむくれさせると、海人はまた笑った。この人は、甘やかすのも驚くほど上手い。疲れていることも、落ち込んでいることも、私が何も言わなくても気づいてしまう。そして、何も聞かずにこうして抱きしめてくれる。

「今日はもう何もしなくていい」

耳元でそう囁かれて、私は素直にその胸に寄りかかった。…こういうところが、ずるい。こんなふうに甘やかされたら。ますます、この人から離れられなくなってしまう。