新作のパウダーは、発売後すぐに好評を得た。海人がデザインしたのは、二頭のイルカ。寄り添うように泳ぐ二頭のイルカが、まるでハートを描いているようなデザインだった。淡いピンクと水色の組み合わせも可愛らしくて、手に取るだけで気分が上がる。自分たちが考えた商品が、こうして誰かの心を動かしている。そのことが、私は嬉しかった。
「あまり可愛い顔するな」
そっと耳元に落とされた声に、背筋がぴんと伸びる。
「す、すみません」
慌てて表情を引き締める。周りの社員たちは、私が何か注意されたのだと思っているらしい。当然だ。会社での海人は、相変わらず仕事熱心で、冷静沈着。鋭い瞳をしていて、隙なんてひとつもない。だけど。ふとした瞬間、私に向けられる瞳だけがひどく優しくなる。そのたびに、私の心臓は忙しくなる。
「そうだ。これ、忘れずに」
海人が私の持っていた資料にそっと付箋を貼った。何気なく視線を落とす。そこには綺麗な文字が並んでいた。「今夜は早く帰る。残業しないように」。思わず、頬が緩みそうになるのを慌てて資料で顔を隠した。
気づけば私たちは、一緒に暮らすようになっていた。というより。最初は、泊まる日が少しずつ増えていっただけだった。
「今日は帰ります」そう言っても、「もう遅い」「明日も仕事だろ」「ここからのほうが近い」そんなことを言われているうちに、帰る理由がなくなっていった。そのうち、私物が少しずつ海人の家に増えていく。そしてある日。
「もう、一緒に住むか?」
あまりにも自然に言われて。
「そうですね」
なんて答えてしまった。それからは、あれよあれよという間に今では、海人の家に帰ることがすっかり当たり前になっている。会社では、誰も知らない。冷静沈着で、怖いとさえ思われている社長が私の前では優しく微笑んで愛を囁いているなんて。
「あまり可愛い顔するな」
そっと耳元に落とされた声に、背筋がぴんと伸びる。
「す、すみません」
慌てて表情を引き締める。周りの社員たちは、私が何か注意されたのだと思っているらしい。当然だ。会社での海人は、相変わらず仕事熱心で、冷静沈着。鋭い瞳をしていて、隙なんてひとつもない。だけど。ふとした瞬間、私に向けられる瞳だけがひどく優しくなる。そのたびに、私の心臓は忙しくなる。
「そうだ。これ、忘れずに」
海人が私の持っていた資料にそっと付箋を貼った。何気なく視線を落とす。そこには綺麗な文字が並んでいた。「今夜は早く帰る。残業しないように」。思わず、頬が緩みそうになるのを慌てて資料で顔を隠した。
気づけば私たちは、一緒に暮らすようになっていた。というより。最初は、泊まる日が少しずつ増えていっただけだった。
「今日は帰ります」そう言っても、「もう遅い」「明日も仕事だろ」「ここからのほうが近い」そんなことを言われているうちに、帰る理由がなくなっていった。そのうち、私物が少しずつ海人の家に増えていく。そしてある日。
「もう、一緒に住むか?」
あまりにも自然に言われて。
「そうですね」
なんて答えてしまった。それからは、あれよあれよという間に今では、海人の家に帰ることがすっかり当たり前になっている。会社では、誰も知らない。冷静沈着で、怖いとさえ思われている社長が私の前では優しく微笑んで愛を囁いているなんて。



