そして放課後。
私は約束通り、静かな図書室のいつもの席で本を開いていた。
ページをめくるフリをしながら、視線はチラチラと入り口の扉へと向いてしまう。
ガララ、と静かに扉が開いた。
そこに立っていたのは、昼間の完璧な王子様でも、屋上の弱り切った彼でもない――少し肩をそびやかし、どこか不機嫌そうな顔をした、私だけの颯太くんだった。
彼は図書室を見回し、私の姿を見つけると、まっすぐに歩いてきた。
周囲に他の生徒が数人いるのを確認すると、彼はわざとらしく、ツンとした声を出す。
「おい、相川。お前、またこんなところで居残りかよ」
「あ、横山くん……」
周りの目を意識した、彼なりのカモフラージュなのだろう。けれど、机の下で、彼は私の制服の袖をグイッと強引に引っ張ってきた。
「ちょっと付き合え。ノート、見せてもらいたい教科あるから」
そう言って、彼は私にしか見えない角度で、ニッと悪戯っぽく笑った。その瞳は「早く二人きりになろう」と、あからさまに急かしている。
「うん。いいよ」
私が微笑んで立ち上がると、颯太くんは満足そうに鼻を鳴らし、先に立って歩き出した。
カバンを肩にかけ、彼の広い背中を追いかける。
誰もいない渡り廊下に出た瞬間。
颯太くんは急に足を止め、振り返るなり、私の手首をキュッと掴んだ。
「……歩くの遅い。置いてくぞ」
「あはは、ごめんね」
「笑うな。……ほら、早く行くぞ」
文句を言いながらも、彼が私の手首を握る力は、優しくて、とても温かかった。学校の喧騒から離れ、私たちは再び、あの二人の境界線へと向かって歩き出す。
私は約束通り、静かな図書室のいつもの席で本を開いていた。
ページをめくるフリをしながら、視線はチラチラと入り口の扉へと向いてしまう。
ガララ、と静かに扉が開いた。
そこに立っていたのは、昼間の完璧な王子様でも、屋上の弱り切った彼でもない――少し肩をそびやかし、どこか不機嫌そうな顔をした、私だけの颯太くんだった。
彼は図書室を見回し、私の姿を見つけると、まっすぐに歩いてきた。
周囲に他の生徒が数人いるのを確認すると、彼はわざとらしく、ツンとした声を出す。
「おい、相川。お前、またこんなところで居残りかよ」
「あ、横山くん……」
周りの目を意識した、彼なりのカモフラージュなのだろう。けれど、机の下で、彼は私の制服の袖をグイッと強引に引っ張ってきた。
「ちょっと付き合え。ノート、見せてもらいたい教科あるから」
そう言って、彼は私にしか見えない角度で、ニッと悪戯っぽく笑った。その瞳は「早く二人きりになろう」と、あからさまに急かしている。
「うん。いいよ」
私が微笑んで立ち上がると、颯太くんは満足そうに鼻を鳴らし、先に立って歩き出した。
カバンを肩にかけ、彼の広い背中を追いかける。
誰もいない渡り廊下に出た瞬間。
颯太くんは急に足を止め、振り返るなり、私の手首をキュッと掴んだ。
「……歩くの遅い。置いてくぞ」
「あはは、ごめんね」
「笑うな。……ほら、早く行くぞ」
文句を言いながらも、彼が私の手首を握る力は、優しくて、とても温かかった。学校の喧騒から離れ、私たちは再び、あの二人の境界線へと向かって歩き出す。


