「……なぁ、お前、それ本気で言ってんの?」
日曜日。学校から電車で30分ほど離れた、お洒落な海沿いの街。
駅の改札前で、少し大人びた私服に身を包んだ颯太くんが、いつものあまのじゃくな顔で私を睨んでいた。
学校での制服姿や、屋上でのぶっきらぼうな姿とは違う、黒のサマーニットに緩めのスラックス。いつもより少しだけセットされた髪が西日に映えて、待ち合わせ場所にいた時は、周囲の女の子たちが何度も振り返るほどだった。
「だって、本当にカッコいいんだもん。すっごく似合ってるよ、颯太くん」
私が真っ直ぐに褒めると、彼はフイッと強引に顔を背け、首の後ろを手で覆った。
耳まで真っ赤に染まっているのが丸見えだ。
「……お前、外でもそういうことサラッと言うな。心臓に悪いって、前も言っただろ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、彼は歩き出すと同時に、私の手をそっと探るようにして、ぎゅっと強く握りしめた。
あの屋上の時と同じ、少し汗ばむほどの熱い手のひら。学校の誰もいないこの街で、私たちは初めて、普通の恋人同士として堂々と手を繋いで歩いていた。
「どこ、行く?」
「……別に、どこでもいいけど。お前、パンケーキとか食いたいってメッセージで言ってただろ。適当に調べて、美味そうな店予約しといたから。……ほら、行くぞ」
「えっ、予約してくれたの!?」
「……あいつらがいない街なら、変にカッコつける必要もねぇし。お前が行きたい場所くらい、ちゃんと連れてってやりたいだろ」
ぶっきらぼうな言葉の裏にある、不器用で、どこまでも優しい気遣い。
学校の「完璧な王子様」だった頃の彼は、スマートにエスコートしてくれたかもしれない。でも、この「ちょっと照れくさそうに、必死に私のために頑張ってくれる颯太くん」のほうが、何百倍も愛おしかった。
海が見えるテラス席で、大きなパンケーキを二人で突つく。
「おいしい?」
「……まぁ、普通。普通にうまい」
「あ、また『普通』って言った。昨日マフィン食べた時もそう言ってたよ」
「うるせぇ! 美味いよ、めちゃくちゃ美味い! これで満足か!」
子供みたいにむくれる彼を見て、私は思わずクスッと笑ってしまった。
すると、颯太くんも釣られたように、ふっと、あの心の底から安心したような、柔らかくて優しい笑顔を浮かべた。
周りには私たちの噂話をする生徒も、彼に完璧を求めるファンもいない。
ただの、等身大の男の子としての彼が、そこにいた。
日曜日。学校から電車で30分ほど離れた、お洒落な海沿いの街。
駅の改札前で、少し大人びた私服に身を包んだ颯太くんが、いつものあまのじゃくな顔で私を睨んでいた。
学校での制服姿や、屋上でのぶっきらぼうな姿とは違う、黒のサマーニットに緩めのスラックス。いつもより少しだけセットされた髪が西日に映えて、待ち合わせ場所にいた時は、周囲の女の子たちが何度も振り返るほどだった。
「だって、本当にカッコいいんだもん。すっごく似合ってるよ、颯太くん」
私が真っ直ぐに褒めると、彼はフイッと強引に顔を背け、首の後ろを手で覆った。
耳まで真っ赤に染まっているのが丸見えだ。
「……お前、外でもそういうことサラッと言うな。心臓に悪いって、前も言っただろ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、彼は歩き出すと同時に、私の手をそっと探るようにして、ぎゅっと強く握りしめた。
あの屋上の時と同じ、少し汗ばむほどの熱い手のひら。学校の誰もいないこの街で、私たちは初めて、普通の恋人同士として堂々と手を繋いで歩いていた。
「どこ、行く?」
「……別に、どこでもいいけど。お前、パンケーキとか食いたいってメッセージで言ってただろ。適当に調べて、美味そうな店予約しといたから。……ほら、行くぞ」
「えっ、予約してくれたの!?」
「……あいつらがいない街なら、変にカッコつける必要もねぇし。お前が行きたい場所くらい、ちゃんと連れてってやりたいだろ」
ぶっきらぼうな言葉の裏にある、不器用で、どこまでも優しい気遣い。
学校の「完璧な王子様」だった頃の彼は、スマートにエスコートしてくれたかもしれない。でも、この「ちょっと照れくさそうに、必死に私のために頑張ってくれる颯太くん」のほうが、何百倍も愛おしかった。
海が見えるテラス席で、大きなパンケーキを二人で突つく。
「おいしい?」
「……まぁ、普通。普通にうまい」
「あ、また『普通』って言った。昨日マフィン食べた時もそう言ってたよ」
「うるせぇ! 美味いよ、めちゃくちゃ美味い! これで満足か!」
子供みたいにむくれる彼を見て、私は思わずクスッと笑ってしまった。
すると、颯太くんも釣られたように、ふっと、あの心の底から安心したような、柔らかくて優しい笑顔を浮かべた。
周りには私たちの噂話をする生徒も、彼に完璧を求めるファンもいない。
ただの、等身大の男の子としての彼が、そこにいた。


