図書室の窓から、素直じゃない恋が降ってきた

彼の切実な問いかけに、私は迷うことなく一歩を踏み出した。
ギュッと私の袖を掴んでいる、彼の冷たい手をそっと両手で包み込む。
驚いたように目を見開いた颯太くんに、私はまっすぐ視線を合わせた。

「嫌いになるわけないよ」

胸の奥から溢れ出た言葉を、一つひとつ紡いでいく。

「学校でみんなに囲まれて笑っている完璧な颯太くんは、確かに眩しくて遠い人に見える。でもね、私はそんなキラキラした肩書きが欲しくて、ここにいるんじゃないよ」

包み込んだ彼の手に、少しだけ力を込めた。

「メッセージだとぶっきらぼうなところも、恥ずかしくなるとすぐ怒るところも、本当は寂しがり屋なところも……。私にしか見せない、そのあまのじゃくで不器用な颯太くんが愛おしいの。だから、どんな颯太くんでも大好きだよ」

夕暮れの静寂の中に、私の告白が優しく溶けていく。
私の言葉を聞いた瞬間、颯太くんの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
耳まで真っ赤に染め上げた彼は、フイッと強引に顔をそむけ、空いた方の手で自分の口元を覆う。

「……お前、そういうことサラッと言うなよ」

「え? あ、ごめん……」

「謝るな! ……心臓に悪いだろ」

ぶつぶつと文句を言う声は完全に震えていて、彼が激しく動揺しているのが伝わってきた。どこまでもあまのじゃくな態度だけれど、私の手を握り返す彼の指先は、さっきまでの冷たさが嘘のように熱を帯びていた。

「……本当に、嫌いにならないんだな?」

前髪の隙間から、上目遣いにこちらを盗み見てくる。その瞳は、まだ少しだけ不安そうだった。

「うん。絶対にならない」

私が確信を込めて頷くと、颯太くんは小さく息を吐き出し、諦めたようにふっと笑った。それは昼間の作り物の笑顔でも、傷ついた顔でもない。心の底から安心したような、柔らかくて優しい、私だけの恋人の笑顔だった。

「……じゃあ、もう一生離さねぇから。覚悟しろよ」

そう小さく悪態をつきながら、彼は私の手を引いて、さらにその体を強く抱きしめてきた。
夕焼けと星空が交ざり合う世界で、私たちは互いの体温を確かめ合うように、いつまでも寄り添っていた。