・凛side
……俺にとって、芽衣ちゃんは特別な女の子だった。
おじさんとおばさんが自衛官で、正義感が強くていつも守ってくれた。
ちっぽけで弱い自分が嫌いだった……。
芽衣ちゃんは足が速くて、リレーの選手に選ばれて、アンカーを務めていた。
逆上がりも跳び箱も得意で、……格好良かった。
「引越しなんてしないで!ずっと側にいてッ!」
芽衣ちゃんは、俺の家の玄関の前で大泣きした。
芽衣ちゃんの涙を、その時、初めて見た。
泣き止んで欲しいけど、どうすれば良いのか分からなくて、オロオロしてると、引越しの準備をする父さんが、家の中から出て来た。
「芽衣を泣かせるとは、男をあげたな。涙を止めるには、黙って抱き締めてやれば良いんだ。」
ダンボールを抱える父さんにそう言われ、芽衣ちゃんの体に腕を回して抱き締めると、芽衣ちゃんは俺の体を抱き締め返した。
芽衣ちゃんの涙と鼻水で、俺が着ていたTシャツは濡れた。
芽衣ちゃんの側にずっといたい。
離れるのは寂しい。でも、強くなるには必要な事だと思った。
弱いままの自分でいたくない。
芽衣ちゃんを守れる、強い男になりたい、そう願った。
芽衣ちゃんの彼氏、“瑞樹先輩”は、バスケ部のキャプテンで人気者だった。
バスケが上手くて、リーダーシップがある。
チームメイトからの信頼が厚く、後輩達から慕われていた。
男の自分から見ても、格好良い人……。
芽衣ちゃんとお似合いだと、……素直に思った。
……芽衣ちゃんは俺を男として、意識した事もない。
俺は芽衣ちゃんがずっと好きなのに。
女の子みたいだと、馬鹿にされて来たが、背が伸びて声が低くなると、今まで見向きもしなかった、女の子達から、好意を向けられるようになった。
好きな人から、好かれないと意味がない。
幼馴染としてではなく、男として見て欲しかった。
芽衣ちゃんと離れて、少しは成長出来たと思い、父さんが日本の大学に呼び戻され、俺は父さんと母さんと、日本に帰って来た。
でも、芽衣ちゃんには彼氏がいて、俺が敵わないような良い男。
諦めるつもりは微塵もないが、強敵なのは違いなかった。
芽衣ちゃんを抱き締めると、俺より小さくて腕の中に収まった。
離したくなくて、腕に力を込めた。
芽衣ちゃんからは、甘く優しい香りがした。
再会した芽衣ちゃんは、髪を伸ばしていて、制服が良く似合っていた。
俺が引っ越す前は、髪は短く切っていて、スカートを履いてるのを、見た事がなかった。
半ズボンか長ズボンを履いてた。
腕の中に閉じ込めた、芽衣ちゃんの体の感触……。
……華奢なのに柔らかかった。
俺とは違う、女の人の体だった。



