夢渡りのバク


アタシはその様子をじいっと見つめていた。


「悪夢の核って、どんな味がするの?」


ずっと気になっていたことを、お父さんに聞いてみる。

お父さんは“うーん”と視線をさまよわせた後、アタシに食べかけの核を差し出した。


「食べてみるかい?お前は夢喰の家の子孫だから、食べることができるよ」


そう言われて、核へと手を伸ばして――止めた。


「止めておく。初仕事まで楽しみにとっておく」


伸ばした手を引っ込めながらふるふると首を横に振った。

気になるけど、念願の初仕事まで我慢だ。

ゴクリとツバを飲み込んで唇を真一文字に引き締める。

その様子を見て、お父さんはふっと笑う。


「そうか、それがいいね――きっと忘れられない味になるよ」


最後の一欠片を口に放り込んだ瞬間、悪夢がその姿を変える。

たくさんの茨が無くなり、花のアーチに変わった。

薄暗かった道は、上空に現れた太陽によって明るく照らされている。

そこはすでに悪夢ではなくなっていた。

これが“バク”の力。

悪夢の核をたいらげてしまえば、その寝苦しさから夢の主を解放してあげられる。

その人の抱えてる重たいものを、軽くしてあげられる。

そのお手伝いが……お仕事が、もうすぐアタシにもできるんだ。

なんて誇らしいことだろう!

美しく生まれ変わった夢の中で、アタシは期待に胸を膨らませた。