夢渡りのバク


「さて……夢芽。お前を引き連れての“夢渡り”は成功したけど――バクの仕事はここからが大変なんだ」


言い聞かせるようなお父さんの口ぶり。

人の夢に渡り、その意識の中に入り込むことをアタシたちは夢渡りって呼んでる。

入って良いのは悪夢の中だけ。

人様の楽しい夢を邪魔するのはバクのお仕事じゃない。

じゃあ何がお仕事かっていうと……。

アタシは背筋をピンと伸ばして答える。


「悪夢を見ている人の、悩みやストレスが形になった悪夢の核……モヤモヤした、黒いハートを探してアタシたちバクの一族が食べるんだよね」


そうすれば、悪夢はたちまち吉夢となる。

バクは悩みの解消、ストレスの緩和に繋がる……素敵なお仕事なんだ。

その人が眠ってる間に解決しちゃうっていうのもヒーローみたいでカッコいい。

アタシはそんなバクのお仕事が大好き。


「うん、悪夢の核……それを見つけて食べて、夢の主に心地良く眠ってもらうのがお父さんたちバクの――本家、夢喰(ゆめばみ)家の仕事だ」


――それじゃあ、悪夢の核はどこにあるかだけど。


そう言ってお父さんはぐるりと辺りを見渡した。

四方八方が茨で囲まれていて、それなのに通れる道はあちらこちらにある。


「それを見つけるのが大変なんだよなぁ」


『同感』


まるで迷路みたいな悪夢の中で、困ったように大人たちが笑う。

アタシはその中心でスンスンと鼻を動かし、一方向を指差した。