「夢芽」
お父さんに呼ばれて振り向いた。
肩までしかないアタシのボブヘアの髪の毛が反動で揺れる。
辺りには黒い茨に囲まれた薄暗い道が辺りに続いていた。
少し離れたところからアタシを手招きするお父さんは、いつも通りの優しい表情。
小走りに駆け寄るアタシの頭を、大きな手のひらが丁寧に撫でる。
ニコリと微笑みながらお父さんはこう言った。
「お父さんたちから離れてはいけないよ。悪夢の中では、いつどこで状況が変わるか分からないからね」
「はい!分かりました、お父さん」
元気良く頷く私の後ろで、お父さんの仲間が笑う。
「夢芽ちゃんは聞き分けの良い子で羨ましいぜ!……うちの息子なんて夢芽ちゃんとそんなに歳も変わんねぇのに生意気でよぉ……」
「あらまぁ、男の子なんて生意気なくらいがちょうど良いではありませんか?遠夢くん」
「近ちゃんとこは良いよ、子供はどっちも娘ちゃんだろ?俺も娘が欲しかったなぁ……いや、息子も可愛いけどよぉ」
お父さんより大きな体の遠夢家のおじちゃんと、お父さんより小さな体の近夢家のおばちゃんが和やかに話していた。
分家である2人の協力が無ければ、本家であるアタシたちの家業……“バク”は効率良く行えないんだって。
だから仲間は大切なんだって、お父さんが言ってた。



