夢渡りのバク


お父さんに聞いたことがある。

悪夢はバクを嫌う――と。

核を食べられないように、悪夢に侵入したバクを排除しようと……邪魔をしてくる。

だからバクは迅速に進めなければいけない。

悪夢に見つかってしまう前に。


「タイムリミットだ夢喰!帰るぞ!」


「でも……!」


アタシは家の中の男の子と核を見る。

そして今にも落ちてきそうな雷を見て……グッと唇を噛み締めた。


「――分かった、帰ろう」


目を閉じて、寝ている自分の体に戻っていくのを意識する。

雷の音が遠のき、聞こえなくなっていく。

目を開けると、自分の部屋だった。

隣のめい子ちゃんは安心したように息をもらしていて、隣の部屋の十和くんは「寝る」と言って部屋の電気を消していた。

夢渡りから戻ってきた体はどことなく重たい。

結局、悪夢の核はそのままに帰ってきてしまった。


「…………」


ぎゅっと握った拳に、爪が食い込む。

アタシたちの初めてのバク。

初めてのお仕事は……失敗に終わった。