ここで帰れば、核が残る悪夢は繰り返されちゃう。
だけど十和くんは帰ろうとする足を止めない。
アタシはその背中に必死に訴えかけた。
「アタシが核を食べなきゃ、あの子はまたすぐに悪夢を見ちゃう!……そうだ、扉を作ってもらえないかな?そうすれば部屋の中に入って――」
「断る」
「っ……なんで?核は目の前にあるんだよ!?」
「悪夢は消え失せた。アイツが見ているのは、もう楽しい夢だ。お前はそれを邪魔したいのか?」
「それは……」
窓の向こうを見る。
温かな家の中、子犬とじゃれ合う男の子は幸せそうに笑っていた。
「その場しのぎでも、楽しい夢を見られているならそれでいいだろ。下手に悪夢を刺激して……アイツの心が壊れちまったら意味がない」
その言葉に、ずっと黙っていためい子ちゃんが怖ず怖ずと手を上げた。
「わ……私もそう思います……。彼の悪夢が変わった今、私たちの存在はもう必要無くなったわけですし……」
「待ってよ、それじゃ根本的な解決法になってないでしょ?よく考え――」
――瞬間。
アタシの言葉を遮り、辺りに雷鳴がとどろく。
気づけば上空には、ゴロゴロと雷雲が広がりアタシたちを威嚇していた。
「始まったな」
十和くんの言葉にめい子ちゃんが続く。
「悪夢による……バクの“排除”……?」



