彼が手を窓にかざすと、男の子の足元に白い子犬が現れる。
――くぅん。
寄り添うように男の子の足にすり寄った子犬を見て、アタシは目を丸くした。
「スゴい……十和くん、悪夢に干渉ができるの?」
「大したことじゃない。想像できる物を作って動かせるってだけだ」
「大したことあるよ!スゴい能力だよそれ!」
謙遜する十和くんに、アタシは喜びの声を上げた。
初めて見たけど、これが分家に生まれた人間だけが持つ能力なんだ……!
アタシたち本家をサポートしてくれる力……なんて不思議でカッコいいんだろう。
子犬の登場で、男の子の見ている悪夢は少しずつ姿を変えていく。
ボロボロだった古い木製の家は、オシャレなレンガの家に。
点滅していたライトは、温かみのある優しいオレンジの光りを灯して男の子と子犬を照らしている。
室内に、さっきまでの悪夢は感じられない。
柔らかそうなフカフカのベッドにソファ。
フローリングの上には豪華な柄のカーペット。
テーブルの上には美味しそうな果物がバスケットの中に並んでいる。
違和感を放つ悪夢の核さえ無ければ、これは完全に“良い夢”そのものだった。
「……こんなもんかな」
十和くんが呟く。
穏やかな表情に変わった男の子を見つめる瞳が、一瞬だけ細められた気がした。
「帰るぞ」
くるりと背を向けて家から離れていく十和くんに慌てて声をかける。
「えっ、なんで……!?ちょっと待ってよ十和くん!」
まだバクは終わっていない。
悪夢の核は、まだあの部屋の中にある。



