夢渡りのバク


室内をぼんやりと照らす天井のライトが、チカチカと点いては消えてを繰り返す中。

男の子は泣きじゃくりながら、馬乗りになった何かを包丁で何度も刺していた。

アタシは窓に顔を押し付けて、彼が乗っている何かに目を凝らす。

それが小さな子供だと気づいたとき、2人のそばに目当ての物を発見した。

真っ黒なハートの形をした顔ぐらい大きなそれは、室内の2人を見下ろすかのようにプカプカと宙に浮いている。


「あった……!悪夢の核だ……!」


絶え間なく涙を流すこの悪夢の主。

彼に向かって心の中でそっと呟く。

大丈夫だよ。

嫌な夢なんて、アタシが全部食べてあげる。

アタシたちの声は悪夢の主には聞こえない。

行動も同じで、アタシたちが何かして彼の悪夢を変えてあげることもできない。

怖い悪夢を楽しい夢に変えるための唯一の方法は、基本的に悪夢の核を食べることだけ。


「このまま部屋にお邪魔して、核を食べちゃおう」


そう言ってドアノブを回してみる。

だけど、古びた扉は音も立てずびくともしない。

まるで侵入を拒むように佇む家の前で、アタシは腕を組んだ。


「どうしよう……どうにかして中に入りたいところだけど、2人はなにか良い案とか――」


「待て、お前たちは余計なことをするな」


「えっ?」


十和くんが窓から男の子を見つめたまま、冷たく言い放った。