スマホを枕元に置いたら、あとは何も考えずに目を閉じるだけ。
そうすると……やがてフワリと体が浮くような感覚がしてくる。
そこで目を開ければ、次の瞬間には周りは誰かの悪夢の中だ。
これは幽体離脱の状態に近いらしい。
だけど、バクが飛ばすのは精神のみで魂は肉体の中だから……長時間でも活動できる。
さて、まずは状況を確認しなきゃ。
ぐるりと辺りを見渡す。
さっきまでいた自室とは打って変わり、月も星も出ていない暗い世界がそこに広がっている。
「ここが……悪夢の中ですか……」
「…………辛気くさい場所だな」
めい子ちゃんと十和くんの姿を確認。
2人も無事に夢渡りができたらしくて安心する。
バク同士の位置が離れすぎていると、個別にアプリを起動して同じユーザーを選ぶ必要があるんだけど……今回はさすがに大丈夫だったみたい。
全員がキチンと同じ悪夢に入れたところで、アタシは2人に声をかけた。
「このまま悪夢の核を見つけよう!そうしたらあとはアタシがそれを食べて――」
その瞬間、誰かの泣き声が聞こえてきた。
声のする方には、古びた木製の家。
「この悪夢の主かも知れない……行ってみよう」
戸惑うめい子ちゃんと、やる気が感じられない十和くんを引き連れて家に向かう。
窓から中を覗くと、そこにはアタシたちと同じくらいの男の子がいた。
泣いている彼の手には……キラリと光る包丁。



