うん……そりゃそうだよね。
めい子ちゃんは今日バクを行うことについて反対だった。
お父さんの都合上、遅かれ早かれバクをやることは決まっていたとしても……それを押し切って賛成したのはアタシだ。
「……まぁ、いいんじゃねえの?さっさと終わらせればいいだけのことだし」
襖を挟んで隣の和室にいる十和くんの声がして、ようやく顔を上げる。
これは……フォローしてくれてるんだろうか。
「それで?本家サマは夢渡りの手順、知ってんの?」
どこかこちらを下に見たような言い方に、少し引っかかる。
だけどグッとこらえてアタシは置いてあったスマホを手に取った。
起動したのは“夢バク”という睡眠管理アプリ。
その日見た悪夢を記録でき、日記のように続けることでポイントが貰えるシステムのそれは、若い世代からちょっとした人気を誇っている。
いくつかある分家のどこかの家が作ったそのアプリは、現代でバクをするために必要なものだ。
ログイン画面を表示して文字を入力する。
yumebami.yumewatari……。
このパスワードがバクである証になり、特別な管理者としてアプリの権限にアクセスが可能になった。
「よし……これでユーザーを選べば、その人とアタシのスマホから同じ信号が出るんだよね」
目には見えない“脳波”と呼ばれるものに繋がる電波信号。
それを頼りにアタシたちの意識は悪夢に飛ぶ。
脳波と電波信号が共鳴することで、悪夢や意識を共有することができるんだって。
この方法はテレビのチャンネルを合わせることと似ているってお父さんが言ってたけど……そこら辺は難しくて詳しいことはよく知らない。
結果的に悪夢に夢渡りして、バクが出来るならそれでいいかなって思う。
ユーザーの中から悪夢の内容が深刻そうな1人を選び、アタシはスマホをタップした。
ユーザー名『毎日真夜中』さん。
アタシたちの初仕事はこの人の悪夢に決めた。



