夢渡りのバク


どぽん――っと体が落ちる感覚がした。

暗い水の中。

冷たさを感じないのは、ここが夢の中だと理解しているから。

夢の中。

そっか、アタシは今、夢を見ているんだ。

重い鉛(なまり)でもくっついているみたいに、下へ下へと落ちていく体。

ふと、遠くなる水面に黒い何かが見えた。

アタシはあれを、どうにかしないといけない。

それが分かっているのに、アタシの体は身じろぎ一つしようともしない。

疲れた。

もう嫌だ。

このまま目を閉じて、沈んでいきたい。

例えこの夢が“悪夢”なんだとしても、アタシはここにずっといたい。


――本当に?


僅かに残った意識が問いかけた。

そういえば、最初はこうじゃ無かった。

始まりの日は、どうだったっけ……?

アタシは数ヶ月前のあの日を思い出す。

まだキラキラと輝いていた頃の自分を、思い出す。

真っ暗な水の中に。

悪夢の中に、一人きりで。



 ***