魔法より、君に恋をする。

翌朝。

「おはよう、リリア」

「おはよう」

 教室へ入ると、窓際の席にいたノアが片手を上げた。その向こうではセシルが鞄から教科書を取り出している。

「おはよう、リリア。今日はちゃんと一人で来られたんだね」

「毎日来てる」

「昨日は?」

「……来た」

「三分遅刻でね」

 ノアが笑う。

「あれは階段が悪い」

「階段に謝ってきなよ」

「嫌」

 リリアは自分の席へ座り、机の上に教科書を並べた。

「いよいよ明日だね」

 隣からセシルの声がした。

「王都?」

「うん」

「楽しみ」

 リリアがすぐに答えると、セシルは少しだけ目を丸くしてから笑った。

「……私も」

「服も考えてる」

「え」

「王都行くなら制服じゃないでしょ?」

「そうだけど」

「セシルは何着る?」

「まだ決めてないかな」

「見たことない服がいい」

「どうして?」

「いつも制服だから。せっかく二人で出かけるなら、普段と違うセシルも見たい」

「……」

「セシル?」

「朝からそういうこと言うの、やめてもらっていい?」

「何が?」

「何でもない」

「最近みんなそれ言う」

 リリアが不満そうにすると、反対側でノアが机に伏せた。

「どうしたの?」

「僕、セシルを応援したくなってきた」

「何を?」

「明日までちゃんと生き延びてほしい」

「大袈裟だね」

「リリアのせいだよ」

「?」

 意味が分からない。

 セシルは耳を赤くしたまま、ノアの肩を軽く叩いた。