魔法より、君に恋をする。

 リリアは最近、一つのことに気づいた。

 学院には、自分の知らない道が多すぎる。

 これは迷子という意味ではない。

 断じて違う。

 単純に、建物が広すぎるのだ。

「……ここ、どこ?」

 ただし今日は、少しだけ迷っていた。

 放課後。

 特別資料室へ向かう途中だった。

 ルシアンと約束した通り、黒い石について調べるためである。

 昨日のうちに「明日の放課後、生徒会室へ」と言われていた。

 そこまでは覚えている。

 問題は、生徒会室へ行くつもりで歩いていたはずなのに、なぜか第三学年棟へ入ってしまったことだった。

「方位針……」

 鞄から銀色の道具を出す。

 そして、すぐ戻した。

 学院内ではあまり役に立たないことを、ようやく学習した。

「偉い」

 自分を褒める。

「何がだ」

 後ろから声がした。

 振り返る。

 黒髪の男子生徒が立っていた。

「クロフォード先輩」

「何をしている」

「生徒会室へ行こうとしてます」

「ここは三年棟だ」

「知ってます」

「今知った顔だな」

「違います」

「そうか」

 絶対に信じていない。

「先輩は?」

「教室から戻るところだ」

「ちょうど良かった」

「何が」

「生徒会室まで連れていってください」

「……堂々としているな」

「迷ってないので」

「迷ってるだろ」

「少し道を間違えただけです」

「それを迷ったと言う」

 カイルは小さく息を吐いた。

「来い」

「はい」

 歩き出す。

 リリアはその隣へ並んだ。

 以前なら、カイルは一歩前を歩いていた気がする。

 けれど今日は隣だった。

 その違いに気づいた自分が、少し不思議だった。