魔法より、君に恋をする。

女子寮の前に着く。

「ここまでで大丈夫です」

「おう」

「タルトありがとうございました」

「次は自分で買えよ」

「じゃあ今度は私がアレンに買います」

 また名前で呼ぶ。

 アレンの眉がわずかに動いた。

「……何買うんだよ」

「好きなの何?」

「何でもいい」

「それ一番困るやつ」

「じゃあ甘くないやつ」

「甘いの嫌い?」

「嫌いじゃねえけど」

「じゃあ今度、一緒に選ぼう」

 リリアに深い意味はなかった。

 けれどアレンは、少し驚いた顔をした。

「今度?」

「うん」

「……そっか」

「何?」

「いや」

 今度は「何でもない」とは言わなかった。

「楽しみにしとく」

「はい」

「じゃあな、リリア」

「また明日、アレン」

 リリアは寮へ入っていった。

 扉が閉まる。

 アレンはその場に残った。

 また明日。

 あまりにも簡単な言葉だった。

 普通の学生なら、何の意味もない。

 今日会った相手に、明日も会う。

 それだけだ。

「……また明日、か」

 胸の奥が痛む。

 待つのは嫌いだ。

 待たせるのはもっと嫌いだ。

 待った先に誰もいないことを、知っているから。

 どれだけ呼んでも返事がないことを知っている。

 朝が来ても、季節が変わっても、それでも時間だけが過ぎていくことを知っている。

 けれど今は違う。

『また明日、アレン』

 明日になれば、彼女がいる。

 同じ学院にいる。

 会いに行けば、会える。

 名前を呼べば、振り向く。

 そして三日後には、彼女はセシルと出かけるのだろう。

 それを思うと少し面白くない。

 けれど、そんな感情すら贅沢なものに思えた。

 誰かが彼女の隣にいることに腹を立てられるのは、彼女自身がここにいるからだ。

「……今度こそ」

 そこまで口にして、アレンは止めた。

 続きを言えば、何かが壊れそうな気がした。

 だから代わりに笑う。

「明日な、リリア」

 今度は、その言葉に返事がなくても寂しくなかった。

 明日になれば、直接言えるのだから。