魔法より、君に恋をする。

「帰るか」

 しばらくして、アレンが立ち上がった。

「はい」

「寮まで送る」

「一人で帰れます」

「信用ねえ」

「みんなそれ言う」

「実績があるからだろ」

「今日は方位針あります」

「逆さにすんなよ」

 リリアが止まった。

「なんで知ってるんですか」

「ノアが笑いながら言ってた」

「……明日怒る」

「俺も笑ったけどな」

「アレン先輩も嫌い」

「はいはい」

 並んで歩き出す。

 しばらくして、リリアが口を開いた。

「アレン先輩」

「ん?」

「さっきの名前」

「ああ」

「二人の時だけなら、アレンでもいいですよ」

 アレンの足が止まった。

「……は?」

「レオン先輩だけ変えるのも不公平なので」

「その理由は気に食わねえ」

「じゃあやめる?」

「やめんな」

「どっち」

「呼べ」

「アレン」

「……」

 分かりやすく黙った。

「やっぱり心臓に悪い?」

「悪い」

「慣れますよ」

「慣れたくねえ」

「なんで?」

 アレンは一瞬黙った。

「慣れたら、特別じゃなくなるだろ」

 リリアは瞬いた。

 アレンも数秒遅れて、自分の発言に気づいた。

「……今のなし」

「嫌です」

「リリア、ほんっとそればっかだな!」

「忘れる理由ないので」

「レオンにも同じこと言ってそうで腹立つ」

「言いました」

「最悪だ!」

 大声で言うので、リリアは笑った。

 アレンは不機嫌そうな顔をしたまま、少しだけ笑っていた。