魔法より、君に恋をする。

 食べ終わったあとも、二人はしばらくそこにいた。

 空はもう夕暮れを過ぎ、薄い青へ変わっている。

「セシル」

「ん?」

「前に好きな人いるって言ってたよね」

 セシルの手が止まる。

「……言ったね」

「まだ好き?」

「うん」

「そっか」

「何?」

「聞いただけ」

「本当に?」

「うん」

 リリアは飲み物の蓋を閉める。

「告白しないの?」

「今はしない」

「ノアも同じこと言ってた」

「ノアも?」

「好きな人いるって」

 セシルの眉が動く。

「へえ」

「セシル、また機嫌悪くなった」

「なってないよ」

「なった」

「……少しだけ」

 初めて認めた。

「なんで?」

「秘密」

「好きな人のこと?」

「まあ、そうかな」

 セシルは少し考えた。

「その人が、誰かを好きになったら嫌だなって思う」

「それが嫉妬?」

「多分ね」

「前にクラスの子が言ってた」

「恋愛の話?」

「うん。他の人といると嫌とか、自分を一番に選んでほしいとか」

 セシルは笑った。

「リリアは?」

「まだ分からない」

「誰かに一番に選ばれたいって思う?」

 少し考える。

「一番じゃなくてもいいかも」

「そっか」

「でも」

 リリアは続ける。

「大事にはしてほしい」

 セシルの瞳が揺れた。

「私も大事にしたいから」

 恋人でなくても。

 友達でも。

 好きな人でも。

 自分が大切にしている人から、自分も大切にされていたら嬉しい。

「……リリアらしいね」

「そう?」

「うん」

 セシルは笑った。

「じゃあ、私は大丈夫そう」

「何が?」

「秘密」

「今日秘密多い」

「これくらいは許して」