魔法より、君に恋をする。

 その夜。

 リリアは女子寮のベッドに横になり、枕元へ銀色の方位針を置いた。

 恋愛について考え始めたせいなのか、今まで何とも思っていなかったことまで気になるようになった。

 セシルが自分にだけ少し甘いこと。

 ノアが時々、冗談では済ませられないほど優しい顔をすること。

 レオンハルトが自分の前では完璧な王子でいなくてもいいと思ってくれたこと。

 アレンが何度も自分を知っているような言葉を零すこと。

 カイルが自分を見る時、時々ひどく苦しそうな顔をすること。

 ルシアンが何もかも知っているようで、自分のことだけはほとんど話さないこと。

 気になる。

 全員、違う意味で。

 誰か一人だけを特別だと思っているわけではない。それでも、入学したばかりの頃よりずっと、彼らのことを知りたいと思うようになっていた。

「……恋愛って難しい」

 答えはまだ出ない。

 けれど、今はそれでいい。

 誰かが自分を好きだからでも、過去に何かがあったからでも、周囲に似合うと言われたからでもなく、いつか自分自身が誰かを好きだと気づいた時に、その気持ちを選びたい。

 その相手が誰なのかは、まだ知らない。

 リリアは目を閉じた。

 六人の顔が順番に浮かんでは消えていったけれど、その夜、最後まで一人だけが残ることはなかった。