魔法より、君に恋をする。

 午後の魔法史。

 教師が古い王国の系譜を書き連ねている間、リリアは珍しく授業とは関係のないことを考えていた。

 原因は、少し前にクラスで話した恋愛の話だ。

『会いたくなる』

『触れたい』

『特別扱いされると嬉しい』

『自分を一番に選んでほしくなる』

 どれも分かるようで、分からない。

 セシルとは手を繋ぐ。

 ノアとは毎日のように一緒にいる。

 けれど、それだけで恋なら簡単すぎる気もする。

「アステル」

「はい」

「今説明した第二次王国期の魔力供給方式について、欠点を一つ」

「供給源を中央塔に集中させすぎています。中央塔を失えば都市全域の魔法機構が停止します。それから外部干渉への耐性も低いので、都市防衛を考えるなら――」

「もういい。正解だ」

「はい」

 教師が苦笑する。

「別のことを考えながらでも聞いていたか」

「聞いてました」

「器用だな」

 周囲から小さな笑い声が上がる。

 隣からノアが囁いた。

「何考えてたの?」

「恋愛」

 ノアがむせた。

「大丈夫?」

「……それを授業中にさらっと言えるリリアがすごい」

「昨日から気になってる」

「恋したいの?」

「分からないから考えてる」

「なるほど」

 ノアは少し考えてから、頬杖をついた。

「答え出た?」

「出ない」

「じゃあ、まだ出さなくていいんじゃない?」

「そうなの?」

「急ぐものでもないでしょ」

 リリアは少し意外に思った。

「ノアなら、恋愛は勢いとか言うと思った」

「僕を何だと思ってるの?」

「軽い人」

「ひどいなあ」

 笑いながらも、ノアは否定しなかった。