魔法より、君に恋をする。

昼食を終えた頃、少し離れた席から女子生徒がノアを呼んだ。

「フェルディナンド君、ちょっといい?」

「うん」

 ノアは立ち上がり、彼女のところへ向かう。

 何やら課題について聞かれているらしい。

 ノアはこういう時も話しやすい。

 相手の話を聞きながら笑って、時々冗談を挟んでいる。

「ノアって人気あるよね」

 リリアが言う。

「そうだね」

「女子にもよく話しかけられてる」

「気になる?」

 セシルに聞かれ、リリアは少し考えた。

「気になるって?」

「……いや。何でもない」

「また?」

「今のは私が悪かった」

 よく分からない。

 もう一度ノアを見る。

 楽しそうに話している。

 以前なら何とも思わなかったはずなのに、最近はこういう場面を見ると少しだけ考えるようになった。

 ノアにも、自分の知らない時間がある。

 セシルにもある。

 先輩たちにもある。

 当たり前のことなのに、誰かと親しくなるほど、その人について知らないことが増えていくような気がする。

「……変なの」

「何が?」

「仲良くなると、もっと知りたくなるんだね」

 セシルがこちらを見た。

「そうだね」

「セシルのこともまだ知らないこと多い」

「知りたい?」

「うん」

 灰青色の瞳が少し見開かれる。

「じゃあ、いくらでも教えるよ」

「本当に?」

「もちろん」

 セシルは柔らかく笑った。

「リリアになら」

 その言葉だけが、少し特別に聞こえた。