魔法より、君に恋をする。

 翌日の昼休み、リリアはいつものようにセシルと食堂へ向かった。

「ノアは?」

「先生に捕まってた。後から来るんじゃないか?」

「そう」

 入学してまだ一か月も経っていないのに、三人で昼食を取ることはすっかり日常になっていた。

 セシルが向かいに座り、リリアはその隣に置かれた空席を見る。

 いつもならノアが勝手に座る場所だ。

「……何?」

 セシルがこちらを見ている。

「何が?」

「いや。ノアがいないと静かだなと思って」

「確かに」

「寂しい?」

「少し?」

 答えてから、自分でも考える。

「でもセシルがいなくても寂しいよ」

「……そうか」

「なんで嬉しそうなの?」

「嬉しそうじゃない」

「ちょっと笑った」

「気のせいだ」

 セシルは顔を逸らし、自分の皿から小さな焼き菓子を一つ取った。

「食べるか?」

「食べる」

「ほら」

 差し出されたので受け取ろうとすると、なぜか手を引かれた。

「何?」

「……いや」

 セシルは一瞬迷ったあと、そのまま焼き菓子をリリアの口元へ差し出す。

「食べるんだろ?」

「うん」

 一口かじる。

 甘い。

「美味しい」

「そっか」

 セシルが笑う。

「何?」

「何でもない」

「最近それ多い」

「便利だからな」

 そこへ、聞き慣れた声がした。

「二人で何してるの?」

 ノアだった。

「焼き菓子食べてた」

「ふうん」

 笑っている。

 けれど、なぜか目がセシルの手元を見ている。

「ノアも食べる?」

 リリアが残りを差し出す。

「……それ、セシルがリリアに食べさせたやつ?」

「うん」

「じゃあいい」

「なんで?」

「僕にも僕なりの矜持があるんだよ」

「よく分からない」

「分からなくていいよ」

 ノアがリリアの隣へ座る。

「その代わり今度、僕が何か買ってあげる」

「方位針もらったばっかり」

「じゃあ食べ物」

「甘いのがいい」

「了解」

 向かいでセシルが呆れたような顔をした。

「甘やかしすぎだろ」

「セシルに言われたくないなあ」

「私は普通だ」

「今食べさせてたよね?」

「たまたまだ」

「僕も今度たまたまやろうかな」

「張り合うな」

「張り合ってないよ?」

「二人とも仲良いね」

「どこが?」

「どこが?」

 また重なった。

 リリアは笑った。

「やっぱり仲良い」