魔法より、君に恋をする。

 試験終了後。

「リリア」

 ノアに呼ばれ、振り返る。

「食堂行こうよ」

「行く」

「即答だね」

「お腹空いた」

「私も行く」

 セシルが隣へ並ぶ。

「というか、お前一人で行かせたら辿り着かないだろ」

「失礼」

「じゃあ場所分かる?」

「……」

「ほら」

 三人で歩き出した。

 曲がり角。

 そこで。

 誰かとぶつかった。

「っ」

 倒れそうになった身体を、強い腕に支えられる。

「危ねえな」

 低い声。

 顔を上げる。

 赤い髪。

 赤い瞳。

 蒼の徽章。

 二年生。

「すみません、先輩」

 リリアが身体を離そうとする。

 けれど。

 青年は。

 動かなかった。

「……」

 リリアの顔を。

 信じられないものを見るように見ている。

「先輩?」

「……お前」

「はい?」

 赤い瞳が揺れる。

「……遅えんだよ」

 小さな声。

「え?」

「何でもねえ」

 ようやく腕が離れる。

 セシルが一歩前へ出た。

「先輩」

 穏やかな声。

 でも。

 リリアとの間へ自然に身体を入れている。

「うちの友人に何か?」

「……友人?」

 青年の眉が動いた。

「今日できた」

「セシル」

「もう友人でいいだろ?」

「いいけど」

「だそうです」

「何だお前」

「セシル・アルヴェイン。一年です」

「……アレン・ヴァーミリオン。二年」

 リリアも頭を下げる。

「リリア・アステルです」

「知ってる」

 即答。

 リリア。

 セシル。

 ノア。

 三人とも黙る。

 アレンも黙る。

「……有名だからな」

「最近それで全部説明される」

 リリアが呟く。

 ノアが吹き出した。