魔法より、君に恋をする。

 日が沈みかけた頃。

 人通りの少なくなった王都の裏通りを、一人の男が歩いていた。

 古びた外套をまとい、顔は深く被ったフードに隠れている。

 男は一度だけ立ち止まり、遠くに見えるアルカディアの尖塔を見上げた。

 その手には、黒い石が握られていた。

 石の表面に走る細い亀裂の奥で、淡い光が脈打っている。

 男が何かを呟くと、その光はゆっくりと十二に分かれた。

 やがて何事もなかったように消えていく。

 休日を終えた生徒たちが学院へ戻っていく中、その異変に気づく者はいなかった。