魔法より、君に恋をする。

夕方。

 リリアと別れたあと、アレンは一人で校舎裏の階段に座っていた。

 治った腕を見る。

 傷は完全に消えている。

 けれど、リリアに触れられていた場所だけが妙に熱かった。

『誰かを守るためなら自分は怪我してもいい、みたいなの嫌です』

「……どの口が言ってんだよ」

 思わず笑う。

 笑ったはずなのに、胸の奥は少しも軽くならなかった。

 あの瞬間。

 魔石が光った瞬間。

 頭で考えるより先に身体が動いていた。

 また失う。

 ただ、それだけが浮かんだ。

 実際には小さな爆発だった。リリアなら簡単に防げただろうし、自分が割って入る必要などなかった。

 分かっている。

 それでも動かずにはいられなかった。

「……遅えんだよ」

 初めて彼女を見た日に、思わず口から零れた言葉。

 あれは、誰に向けたものだったのだろう。

 リリアにか。

 自分にか。

 それとも、ようやくここまで辿り着いた時間そのものにか。

 アレンは答えを考えるのをやめた。

 今はまだ、彼女が何も知らずに笑っている。それなら、それでいい。

 ただ一つだけ、どうしても譲れないことがある。

「今度は置いてくなよ」

 誰もいない廊下に落ちた声は、返事を待つことなく静かに消えた。