魔法より、君に恋をする。

食堂へ着いたところで別れると思っていたのに、アレンはなぜかそのまま中へ入った。

「先輩、食堂じゃないって言ってませんでした?」

「気が変わった」

「暇なんですか?」

「帰るぞ」

「ごめんなさい」

「謝んの早えな」

 昼時の食堂は混雑していた。

 空いている席を探していると、少し離れた場所から女子生徒たちの声が聞こえてくる。

「アレン先輩だ」

「隣、一年の首席じゃない?」

「最近よく上級生と一緒にいるよね」

 リリアは聞こえないふりをした。

 アレンも気にしていないようだった。

「何食う」

「クリームシチュー」

「またそれか」

 リリアが顔を上げる。

「……また?」

 アレンが止まった。

「私、アレン先輩と食堂来るの初めてですよね?」

「……人気メニューだからそう思っただけだ」

「まだ頼んでる人見てないですけど」

「細けえな」

「先輩が変なこと言うからです」

「早く取れ」

 また誤魔化した。

 リリアは疑わしそうに彼を見ながらトレーを取る。

「パンも取れ」

「いらないです」

「後で腹減るぞ」

「減りません」

「取っとけ」

「お母さんみたい」

「誰がお母さんだ!」

 周囲の視線が一斉に集まった。

 アレンが舌打ちする。

「お前のせいだからな」

「先輩の声が大きいからです」

 結局、パンは取らされた。

 二人で空いている席へ座る。

「アレン先輩って、意外と世話焼きですね」

「違う」

「じゃあなんでパン取らせたんですか?」

「……お前、昼少なくすると夕方腹減って菓子ばっか食うだろ」

 リリアのスプーンが止まった。

 アレンも止まった。

「なんで知ってるんですか?」

「……」

「私、それセシルにもノアにも言ってないです」

「見りゃ分かる」

「どうやって?」

「勘」

「便利ですね、先輩の勘」

「うるせえな」

 アレンは露骨に顔を逸らした。

 怪しい。

 かなり怪しい。

 リリアはシチューを一口食べながら考える。

 ルシアンは何かを知っていると認めた。

 カイルも明らかに隠している。

 レオンハルトは本人にも分からない記憶のようなものがあるらしい。

 そしてアレンは、おそらく隠し事が壊滅的に下手だ。

「アレン先輩」

「今度は何だ」

「嘘つくの下手ですね」

「喧嘩売ってんのか?」

「感想です」

「お前はもうちょい先輩を敬え」

「敬語使ってます」

「レオンハルトにもそれ言ってそうだな」

「言いました」

「……あいつにも?」

「はい」

 なぜかアレンの機嫌が悪くなった。

「レオンハルトとよく話すのか?」

「昨日話しました」

「二人で?」

「はい」

「どこで」

「中庭です」

「何で」

「迷ったらいました」

「……お前、迷子になった先で男拾うのやめろ」

「拾ってません」

「ノクスとも二人でいたよな」

「資料室で」

「クロフォードには寮まで送られたんだろ」

「なんで知ってるんですか?」

「噂になってんだよ」

「嫌な学院」

「お前が目立ちすぎなんだ」

「アレン先輩とも今一緒にいるから、また噂になりますね」

 アレンが黙った。

「嫌なら別の席行きます?」

「……何でそうなる」

「噂、嫌かなと思って」

「別に」

「じゃあいいですね」

「おう」

 アレンはぶっきらぼうに答えたあと、少しだけ口元を緩めた。