魔法より、君に恋をする。

 翌朝、リリアが女子寮の玄関を出たのは七時二十八分だった。

 約束より二分早い。普段なら朝の二分など気にも留めないのに、今日はなぜか部屋を出る前から時計を何度も確認してしまった。別に急ぐ必要はないし、カイルが迎えに来るというだけで特別な予定があるわけでもない。それでも昨日の「明日は、迷う前に待っていろ」という声を思い出すと、少しだけ胸が落ち着かなかった。

 外へ出て、すぐに足を止める。

 カイルはもういた。

 女子寮から少し離れた木の下で、深紅のネクタイを締めた長身の青年が腕を組んで立っている。朝の光の中でも相変わらず近寄りがたい雰囲気なのに、リリアを見つけるとすぐにこちらへ歩いてきた。

「早いですね」

「お前もな」

「何時からいたの?」

「少し前だ」

「何分?」

「どうでもいい」

「気になる」

「五分だ」

「七時二十五分?」

「ああ」

「私、七時半って言ったのに」

「遅れるよりいい」

「もしかして楽しみだった?」

 カイルの足が一瞬止まった。

「何がだ」

「私に会うの」

「……朝から妙なことを言うな」

「違うんだ」

「そういう問題ではない」

「じゃあ何?」

「行くぞ」

 答えずに歩き始める。

 昨日より分かりやすい。

 リリアは少し笑いながら隣へ並んだ。

「クロフォード先輩」

「何だ」

「歩くの遅くしてる?」

「していない」

「昨日より遅い」

「気のせいだ」

「私に合わせてる?」

「……お前は朝からよく喋るな」

「答えないってことは当たり?」

「好きに解釈しろ」

「じゃあ優しいってことにします」

 カイルは何も言わなかったが、歩く速度は変わらなかった。

 北塔へ向かうには一年生棟とは反対方向へ進む必要がある。本来ならリリアがわざわざ行く理由はない。それでも昨日見た研究室が気になっていたし、何よりカイルと話したかった。

「昨日の魔法陣、続きを見てもいい?」

「ああ」

「触っても?」

「駄目だ」

「何で?」

「壊す」

「壊さない」

「お前の魔力は干渉が強い。触れた瞬間に術式が変わる可能性がある」

「じゃあクロフォード先輩が一緒なら?」

「俺が見ていても駄目だ」

「厳しい」

「研究を何だと思っている」

「面白そうなもの」

「触るな」

「まだ何もしてない」

 カイルが小さく息を吐く。

 昨日までは、この溜息をつかれると嫌われているのかと思っていた。

 今は少し違う。

「クロフォード先輩、私と話す時よく溜息つきますね」

「誰のせいだ」

「嫌?」

 カイルがこちらを見る。

「何が」

「私と話すの」

「……嫌なら迎えに来ていない」

 胸が少しだけ鳴った。

「そうですね」

「何だ」

「何でもない」

「急に静かになるな」

「クロフォード先輩のせい」

「なぜ俺のせいになる」

「知らない」

 今度はリリアが前を向いた。

 少しだけ頬が熱い。

 それを見られたくなかった。

     *

 研究室へ入ると、昨日と同じ魔法陣が浮かんでいた。

 カイルは机の上に資料を広げ、リリアへ一冊の古い本を渡した。

「これを読め」

「朝から勉強?」

「見たいと言ったのはお前だ」

「見るだけかと思った」

「理解せずに見ても意味がない」

「先生みたい」

「嫌なら帰れ」

「読みます」

 椅子へ座り、本を開く。

 魂と魔力の結合について書かれた専門書らしく、一ページ目から知らない用語が並んでいた。

「……難しい」

「どこが」

「最初から」

「貸せ」

 カイルが隣へ来る。

 リリアの持っている本へ手を伸ばし、ページを指差した。

「ここは飛ばしていい。必要なのは魂が魔力情報を保持する仕組みだ」

「魂って記憶を持つの?」

「通常は完全な形では持たない。だが強い魔力や感情が結びついた場合、痕跡が残ることがある」

「クロフォード先輩の記憶みたいに?」

「俺の場合は特殊だ」

「生まれた時から覚えてたんでしょ?」

「ああ」

「怖くなかった?」

 カイルの指が止まった。

「何が」

「赤ちゃんの時から知らない人生の記憶があるの」

「幼い頃は夢だと思っていた」

「いつ本当だって気づいた?」

「五歳頃だ」

「早い」

「夢で見た魔法陣を書いたら発動した」

「五歳で?」

「ああ」

「天才」

「お前に言われたくない」

「私も天才だから?」

「自覚があるのか」

「あります」

「そこは謙遜しろ」

「事実なので」

 カイルの口元が僅かに緩んだ。

「笑った」

「笑っていない」

「今笑った」

「気のせいだ」

「最近そればっかり」

「お前が余計なところを見ているからだ」

「見たいから」

 言ってから、自分でも少し驚いた。

 カイルも黙る。

「……何をだ」

「クロフォード先輩」

 今度は考えてから答えた。

「もっと知りたい」

 カイルの視線が本からリリアへ移った。

 近い。

 隣に座っているから、昨日よりずっと近い距離に顔がある。

「なぜ」

「分からない」

「昨日からそればかりだな」

「クロフォード先輩も分からないって言ってたでしょ」

「俺は」

 何か言いかけて止まる。

「何?」

「……いや」

「また隠した」

「隠していない」

「じゃあ言って」

「必要ない」

「ほら」

 リリアは少しむっとして本を閉じた。

「クロフォード先輩、私には何でも聞くくせに、自分のこと全然言わない」

「何でもは聞いていない」

「昨日だって私が何で来たのか聞いた」

「それは普通だろう」

「私だって普通に聞いてる」

「何を知りたい」

「いっぱい」

 リリアは指を折った。

「好きな食べ物」

「特にない」

「それ禁止」

「なぜ」

「会話が終わるから。何かあるでしょ」

「……コーヒー」

「食べ物じゃない」

「甘くない焼き菓子」

「あるじゃん」

「お前は?」

「甘いもの」

「知っている」

「何で?」

「よく食べている」

 リリアは瞬きをした。

「見てたの?」

「目に入る」

「どんなの食べてた?」

「先週は食堂で苺のタルト。その前は図書館前の売店で蜂蜜菓子。実戦祭の時はノアからチョコレートを貰っていた」

「……めちゃくちゃ見てない?」

 カイルが固まった。

「クロフォード先輩」

「偶然だ」

「三回も?」

「学院は狭い」

「広いですよ」

「……本を読め」

「誤魔化した」

 カイルが本を開き直し、リリアの前へ置く。

 耳が少し赤い。

 昨日は確認できなかった。

 今日ははっきり見えた。

「やっぱり赤い」

「何が」

「耳」

「赤くない」

「赤い」

「見るな」

「可愛い」

 今度こそカイルがこちらを向いた。

「……誰が」

「クロフォード先輩」

「俺にその言葉を使うな」

「何で?」

「似合わない」

「でも可愛い」

「やめろ」

「照れてる」

「リリア」

「はい」

「黙って読め」

「怒った?」

「怒っていない」

「じゃあ可愛い」

「……帰すぞ」

「読みます」

 笑いを堪えながら本へ視線を落とす。

 でも、内容はしばらく頭に入ってこなかった。

 カイルの耳が赤くなること。

 自分が何を食べているのか覚えていたこと。

 そんな些細なことばかりが気になった。

 怖い先輩だと思っていたのに。

 知れば知るほど、全然違う。

     *

 それから数日、朝の約束は自然に続いた。

 最初は北塔へ行くためだった。

 二日目も研究室。

 三日目も研究室。

 四日目になると、リリアが「今日は別に研究しなくてもいい」と言った。

「なら、なぜ来た」

「会いたかったから」

 カイルはその場で黙った。

「……それだけか」

「うん」

「研究は?」

「今日はいい」

「では何をする」

「散歩?」

「朝から?」

「嫌?」

「嫌ではないが」

「じゃあ行こう」

 そうして二人で学院の庭を歩いた。

 五日目にはカイルがコーヒーを持ってきた。

 リリアの分は甘いミルクティーだった。

「何で私の甘いの?」

「苦いものは飲まないだろう」

「知ってるんだ」

「……見ていれば分かる」

「また見てた」

「その言い方をやめろ」

 六日目にはリリアが焼き菓子を持っていった。

 甘くないものを選んだ。

 カイルは一口食べて「悪くない」と言った。

「美味しいって言えばいいのに」

「悪くないは褒めている」

「分かりづらい」

「覚えろ」

「じゃあクロフォード先輩が『悪くない』って言ったら『好き』って意味?」

「飛躍するな」

「私のことは?」

「何が」

「悪くない?」

 カイルがむせた。

 初めて見た。

「大丈夫?」

「お前……」

「冗談」

「そういう冗談を言うな」

「何で?」

「……何でもだ」

 それからリリアは、その質問を何となく忘れられなくなった。

     *

 七日目。

 いつもの場所へ行くと、カイルがいなかった。

 リリアは時計を見る。

 七時三十分。

「珍しい」

 遅刻する人には見えない。

 七時三十五分。

 まだ来ない。

 七時四十分。

 少し不安になる。

「何かあった?」

 前日の別れ際には何も言っていなかった。

 研究で徹夜でもしたのだろうか。

 体調を崩したのかもしれない。

 七時四十五分になったところで、リリアは待つのをやめた。

「探そう」

 北塔ならもう一人でも行ける。

 一週間通ったのだ。

 さすがに覚えた。

 そう思って歩き出し、数分後。

「……ここどこ?」

 見覚えのない階段にいた。

「何で?」

「それは俺が聞きたい」

 後ろから声がした。

 勢いよく振り返る。

「クロフォード先輩!」

 階段の下にカイルが立っていた。

 いつもより少し息が上がっている。

「何でここにいる」

「探してた」

「待っていろと言っただろ」

「遅かったから」

「十五分だ」

「十五分も」

「それくらい待て」

「何かあったのかと思った」

 言うと、カイルが黙った。

「研究で倒れてるかもしれないし、体調悪いのかもしれないし」

「リリア」

「何?」

「心配したのか」

「するでしょ」

「……そうか」

「何でちょっと嬉しそうなの?」

「嬉しくない」

「嘘」

「それより戻るぞ」

「何で遅れたの?」

 カイルは答えない。

「クロフォード先輩」

「……これだ」

 差し出されたのは小さな紙袋だった。

「何?」

「開けろ」

 中を見る。

 小さな苺のタルトが入っていた。

「……これ」

「先週食べていただろう」

「食堂の?」

「同じ店のものだ」

「何で?」

「朝、店が開く時間が遅れた」

「それで遅刻したの?」

「遅刻ではない」

「十五分遅れた」

「……悪かった」

 リリアはタルトを見る。

 それからカイルを見る。

「私に?」

「他に誰がいる」

 昨日までなら、ただ嬉しかったと思う。

 でも今は違った。

 胸の奥がきゅっと縮まって、そこから熱が広がる。

「クロフォード先輩」

「何だ」

「これ、かなり嬉しい」

「そうか」

「ありがとう」

「ああ」

「私が好きだから買ってきたの?」

「タルトが、だろう」

「うん」

「そうだ」

「私が喜ぶと思った?」

 カイルが一瞬黙った。

「……そうだ」

「喜ばせたかった?」

「質問が多い」

「答えて」

 カイルは視線を逸らした。

「そうだ」

 胸がまた鳴った。

「何で?」

「何でとは」

「私を喜ばせたい理由」

「……知らない」

「分からない?」

「ああ」

「私も分からない」

「何が」

「何でこんなに嬉しいのか」

 カイルがこちらを見る。

 リリアは紙袋を胸元へ抱えた。

「タルト貰ったからだけじゃない気がする」

「……そうか」

「うん」

 少しだけ沈黙が落ちた。

 今までなら気まずかったかもしれない。

 でも今日は違う。

 カイルの顔を見ているだけで、何となく落ち着く。

「食べるか」

「ここで?」

「研究室へ行く」

「一緒に?」

「俺が買ったんだ。感想くらい聞かせろ」

「じゃあ半分あげる」

「甘いものは食べない」

「一口」

「いらない」

「恋人みたい」

 口から出た。

 二人とも止まった。

「……何がだ」

 カイルの声が僅かに低くなる。

「朝迎えに来て、好きなもの買ってきて、一緒に食べるの」

「それだけで恋人になるのか」

「ならないけど、ちょっとそれっぽい」

「お前は」

 カイルが何か言いかけて、止めた。

「何?」

「そういうことを、他の男にも言うのか」

 今度はリリアが黙った。

「言わないと思う」

「思う?」

「少なくとも、今はクロフォード先輩にしか言ってない」

 カイルの目が僅かに揺れる。

「そうか」

「何で?」

「何でもない」

「またそれ」

 リリアは少し考えてから、彼の袖を摘んだ。

「行こう」

「……何をしている」

「迷わないように」

「袖を掴む必要はない」

「じゃあ手?」

 カイルが完全に固まった。

「手を繋げば迷わない」

「必要ない」

「何で?」

「お前は簡単に男と手を繋ごうとするな」

「簡単じゃないですよ」

「今言っただろう」

「クロフォード先輩だから」

 昨日と似た言葉。

 でも今日は、言った自分の方が先に恥ずかしくなった。

 カイルも黙っている。

 袖を摘んでいた指を離そうとした。

「……じゃあ、袖でいい」

 その瞬間。

 手首を掴まれた。

 昨日より優しく。

 カイルの手が、そのまま少し下へ滑る。

 指先が触れる。

 リリアは息を止めた。

「クロフォード先輩?」

「迷うんだろう」

「……うん」

「なら」

 大きな手がリリアの手を包んだ。

 完全に指を絡めるわけではない。

 ただ掌を重ねているだけ。

 それでも、初めてだった。

「これでいい」

 カイルは前を向いたまま言った。

 耳が赤い。

 リリアも自分の顔が熱いことを自覚していた。

「……クロフォード先輩」

「何だ」

「私、今ちょっと緊張してる」

「言うな」

「先輩も?」

「言うな」

「してるんだ」

「リリア」

「はい」

「黙って歩け」

「手は?」

「……そのままでいい」

 胸の奥がまた大きく鳴った。

 二人で歩き出す。

 いつもよりずっと近い。

 カイルは前を向いたまま、こちらを見ない。

 それなのに手だけは離さない。

 リリアも何も言わず、その手を握った。

 恋人ではない。

 好きだとも言っていない。

 ただ、朝に会う約束をして、好きなものを覚えていてくれて、手を繋いで歩いているだけ。

 それなのに、昨日までとは明らかに何かが違っていた。

 北塔へ着く頃には、リリアはもう道順をほとんど覚えていた。

 それでも、カイルには言わなかった。

 手を離す理由を、自分から作りたくなかったからだ。

 研究室の前へ着くと、カイルが扉を開けるために手を離した。

 たったそれだけなのに、掌が急に寒く感じた。

 リリアは自分の手を見る。

「……何だろ」

「何が」

「何でもない」

「そうか」

 カイルが扉を開ける。

「入れ」

「うん」

 部屋へ入ろうとして、リリアは足を止めた。

「クロフォード先輩」

「何だ」

「明日も迎えに来る?」

 カイルは少しだけ目を見開いた。

「もう道は覚えただろう」

 ばれていた。

「……たぶん」

「なら一人で来られる」

「そうだけど」

「何だ」

 リリアは迷った。

 理由を言ってしまったら、何かが変わる気がした。

 それでも、昨日「もっと知りたい」と言った時と同じように、口から先に出た。

「迎えに来てほしい」

 カイルの表情が止まった。

「何で?」

「分からない」

「またそれか」

「でも、来てほしい」

 カイルはしばらくリリアを見ていた。

 やがて、ほんの少しだけ困ったように目を細めた。

「七時半か」

「うん」

「分かった」

「来てくれる?」

「ああ」

「五分前?」

「……たぶんな」

 リリアは笑った。

「じゃあ私も五分前に行く」

「好きにしろ」

「待っててね」

「ああ」

 カイルはそう答えてから研究室へ入った。

 リリアもその後を追う。

 机の上に苺のタルトを置き、二人分の皿を探しながら、明日の朝のことを考えている自分に気づいた。

 まだ今日も始まったばかりなのに、もう次に会う約束が嬉しい。

 それが何という気持ちなのか、リリアにはまだ分からなかった。

 ただ、明日も七時半になれば、あの人が自分を待っている。

 そう思うだけで、今日一日が少しだけ特別になる。

 一方、カイルはコーヒーを淹れながら、先ほどリリアと繋いでいた右手を無意識に握っていた。そこにはもう何の温度も残っていないはずなのに、掌だけが妙に熱い。

 かつて、この手で一人の少女の命を終わらせた。

 その記憶があるから、今のリリアには必要以上に触れないと決めていた。

 守るとしても距離を置く。過去と現在を混同しない。彼女の人生に、自分の罪悪感を持ち込まない。

 そのはずだった。

 けれど今日、手を差し出したのはリリアではない。

 自分だった。

 迷わないようにという理由なら、袖を掴ませるだけで十分だった。それなのに、自分から彼女の手を取った。

 しかも、離したくないと思った。

 昔のリリアと同じ顔だからではない。

 昔の彼女なら、あんなふうに「恋人みたい」などと平然と言って自分を困らせたりしなかった。甘いものを貰っただけであんなに嬉しそうに笑ったり、迷子になることを理由に手を繋ごうとしたりもしなかった。

 今のリリアだからだ。

 その事実に気づくほど、カイルは困る。

「クロフォード先輩」

 後ろから呼ばれて振り返る。

「何だ」

「お皿どこ?」

「上だ」

「届かない」

 見ると、リリアが棚へ腕を伸ばしている。

 身長が足りていない。

「退け」

「取れる?」

「当たり前だ」

 背後から腕を伸ばす。

 皿を取るだけのつもりだった。

 けれど棚が狭く、自然とリリアを後ろから囲うような形になった。

 銀白の髪がすぐ目の前にある。

 甘い香りがした。

 リリアが振り返ろうとする。

「クロフォード先輩?」

「動くな」

「何で?」

「……頭が当たる」

「あ、そっか」

 リリアは素直に止まった。

 カイルは皿を取る。

 すぐ離れればいい。

 それなのに、一瞬だけ動けなかった。

 この距離で抱きしめたら、どんな顔をするのだろう。

 そんな考えが浮かんだ自分に驚いた。

 カイルはすぐに一歩下がった。

「ほら」

「ありがとう」

 何も知らないリリアが皿を受け取る。

「クロフォード先輩?」

「何だ」

「顔赤い?」

「赤くない」

「また?」

「見るな」

 リリアが笑う。

 その笑顔を見て、カイルは小さく息を吐いた。

 明日も七時半。

 また会う。

 それが嬉しいと思ってしまった時点で、もう距離を置くという選択は、思っていたよりずっと難しくなっていた。