魔法より、君に恋をする。

入学して二週目に入る頃には、リリアもようやく学院生活に慣れ始めていた。

 授業の時間割を覚え、食堂で気に入ったメニューも見つけた。入学当初は遠巻きにこちらを見ていたクラスメイトたちとも、今では授業前に話したり、昼休みに声をかけられたりする。どうやら「近寄りがたい首席」という最初の印象は、リリアが毎日のように迷子になっているうちに随分薄れたらしい。

 そして何より、教室から食堂までなら一人で辿り着けるようになった。

「成長した」

「その程度で誇らしげにするなよ」

 昼休み。リリアが自信満々に報告すると、向かいに座っていたセシルが呆れた顔をした。

「最初は食堂に行こうとして訓練場に着いたんだよ?」

「それを基準にするな」

「今日は一人で来られた」

「僕、途中まで一緒だったけど」

 隣に座るノアが口を挟む。

「途中から一人だった」

「最後の廊下だけじゃない?」

「一人は一人」

「リリアって妙なところで負けず嫌いだよね」

「普通」

「それ、自分で言う?」

 ノアが笑ったところで、近くの席にいたクラスの女子生徒がリリアたちへ振り向いた。

「そういえば、今日の放課後の魔法実技って二年生と合同らしいよ」

「合同?」

「一年と二年で二人一組になって、魔力制御の練習するんだって」

「面倒そう」

「そこは楽しみって言うところじゃない?」

 女子生徒が笑いながら友人たちの席へ戻っていく。

 こうして何気なく会話へ混ざる生徒も、この一週間で随分増えた。

 リリア自身は最初から誰かを遠ざけていたつもりなどなかったのだが、入学試験で歴代最高記録を出しただの、魔晶石を壊しただのという噂のせいで、勝手に近寄りがたいと思われていたらしい。

「知らない先輩と組むの、気を使う」

 リリアが呟くと、セシルが呆れたように頬杖をついた。

「お前、本当に人付き合いに向いてないな」

「普通に友達いるけど」

「私とノアくらいだろ」

「他の子とも喋るよ」

「それは友達じゃなくてクラスメイト」

「違うの?」

「……そこからか」

 セシルが頭を抱える。

 ノアは二人のやり取りを眺めながら、楽しそうに笑っていた。

「まあ、リリアはそのうち増えるんじゃない?」

「友達?」

「うん。放っておいても人が寄ってくるタイプみたいだし」

「そうかな」

「そうだよ」

 ノアが頬杖をついたまま、少しだけ目を細める。

「最初は僕に『ノアも友達でしょ』って言ってくれたのに、これからどんどん増えていくのかな」

「いいことでしょ」

「僕としては複雑」

「なんで?」

「さあ、なんでだろうね」

 セシルがちらりとノアを見る。

「お前、たまに面倒くさい彼氏みたいになるな」

 ノアは笑顔のままセシルを見返した。

「セシルにだけは言われたくないなあ」

「なんで私?」

「自覚ないならいいよ」

「何だそれ」

 二人の間に妙な空気が流れたが、リリアには理由が分からない。

「仲良いね」

「どこが?」

「どこが?」

 二人の声が綺麗に重なった。

 やっぱり仲良いと思う。

    *

 午後の合同実技授業は、第一魔法演習場で行われた。