魔法より、君に恋をする。

「第一講堂なら、こちらだよ」

 別の声がした。

 二人が振り返る。

 そこにいた青年を見て、周囲の空気が変わった。

 金色の髪。

 青い瞳。

 制服の胸元には二年生を示す蒼の徽章。

 何より。

「あ……殿下」

 近くの生徒が小さく呟いた。

 リリアにも分かった。

 第二王子。

 レオンハルト・エル・グランツ。

 教本で見た肖像画より、本人はずっと若々しく見える。

「新入生?」

「はい」

 リリアは自然と敬語になる。

「第一講堂を探していて」

「僕もそちらへ向かうところだから、途中まで案内しよう」

「ありがとうございます」

 セシルが横で小さく笑った。

「助かったな、リリア」

 その名前を聞いた瞬間。

 レオンハルトの歩みが止まった。

「……」

 リリアは気づいた。

「先輩?」

 青い瞳がこちらを見ている。

「君……」

 一瞬。

 彼の顔から。

 完璧な王子様の微笑みが消えていた。

「リリア・アステル?」

「はい」

「……そう」

 何だろう。

 さっきまでとは違う。

 驚いているような。

 もっと別の何かを見ているような。

 けれど。

「ごめん。少し驚いただけだよ」

 すぐに微笑みが戻る。

「今年の首席だろう? 噂は聞いている」

「みんな知ってるんですね……」

「知らなかったの?」

「本人だけ知らなかったらしいですよ」

 セシルが横から口を挟む。

「セシル」

「事実だろ」

 レオンハルトが笑った。

「僕はレオンハルト。二年だ」

「リリアです。よろしくお願いします、レオンハルト先輩」

「……」

 また。

 ほんの一瞬。

 不思議な顔をされた。

「はい。よろしく、リリア」

 名前を呼ぶ声が。

 なぜか。

 少しだけ優しかった。