魔法より、君に恋をする。

 春季実戦祭二日目。

 第十三部隊は、朝から喧嘩をしていた。

「だから俺が前だっつってんだろ!」

「昨日も前だっただろ」

「だから何だよ!」

「今日は俺が行く」

「クロフォード先輩が前だと固すぎる」

「何が悪い」

「攻める気ある?」

「お前よりは考えている」

「喧嘩売ってんのか!」

「事実だ」

「買った!」

「売ってない」

「二人とも朝から元気だねえ」

 ノアが笑いながらパンを食べている。

 食堂。

 第十三部隊の朝食。

 実戦祭二日目の競技形式が発表されたのは、ほんの五分前だった。

 今日の形式は、拠点争奪戦。

 演習区画内に設置された五つの魔力塔を奪い合い、制限時間終了時により多く確保していた部隊が勝利する。

 昨日の救出戦とは違い、攻撃も防御も必要になる。

「私は中央がいい」

 リリアが言った。

 全員が止まった。

「何?」

「いや」

 レオンハルトが苦笑する。

「自分から中央って言うとは思わなかった」

「昨日楽しかった」

「中央が?」

「みんな見える」

 リリアは卓上の簡易地図を指す。

「中央の塔取ったら、全部届きそう」

「……」

 ノアが地図を見る。

「届く?」

「たぶん」

「この距離だよ?」

「届く」

「言い直した」

「いける」

 セシルが少し考える。

「いいかもしれない」

「アルヴェイン?」

「リリアを中央に置けば、どこかが崩れても援護できる。昨日みたいに固定するんじゃなくて、中央を拠点にして自由に動いてもらうの」

「でも中央は狙われるよ」

 レオンハルトが言う。

「だから私が残る」

 セシルが答えた。

「セシルも?」

「嫌?」

「嫌じゃない」

「じゃあ決まり」

「早いなあ」

 ノアが頬杖をつく。

「僕も中央がいい」

「駄目」

「即答?」

「ノアは動けるから外」

「セシルも動けるじゃん」

「私は近接だから中央防衛に向いてる」

「僕だって――」

「ノア」

 リリアが呼ぶ。

「何?」

「右取ってきて」

「……」

「駄目?」

 ノアは数秒黙った。

「その頼み方ずるくない?」

「普通」

「本人だけ分かってないの怖いなあ」

 それでも笑う。

「分かった。取ってくる」

「ありがとう」

 カイルが地図へ指を置いた。

「なら俺は北だ」

「じゃあ俺南」

 アレンが言う。

「レオン先輩は?」

「最初はノアと東へ行く。そのあと中央へ戻って全体を見る」

「うん」

 リリアは満足そうに頷いた。

「完璧」

「まだ始まってないよ」

 レオンハルトが笑う。

 少し離れた場所で。

 ルシアンは、その光景を静かに見ていた。

「ルシアン先輩?」

 呼ばれて顔を上げる。

「何?」

「聞いてた?」

「もちろん」

「嘘」

「どうして?」

「今ぼーっとしてた」

「……よく見てるね」

「最近見るようになった」

 昨日も聞いた言葉。

 ルシアンは少しだけ笑う。

「いい作戦だと思うよ」

「本当?」

「中央のリリアとセシルをどう崩されないようにするかが鍵だけど」

「崩れません」

 セシルが答える。

「頼もしいね」

「任せてください」

「じゃあ」

 ルシアンは六人を見る。

「今日も全員で帰っておいで」

「うん」

 リリアが即答する。

 昨日より。

 その言葉はずっと自然だった。