魔法より、君に恋をする。

 開会式が終わると、各部隊はそれぞれの待機区画へ移動した。

 第十三部隊の初戦は午前第二試合。

 対戦相手は第二部隊。

 演習区画へ向かう前に、ルシアンが最後の確認をする。

「昨日話した通り、初戦は救出戦。救助対象は三体」

 机の上に簡略化された地図を広げる。

「ただし、配置は開始まで不明。演習区画は森林、廃墟、水路の三区域に分かれている」

「全部探す?」

 リリアが聞く。

「それでは遅い」

 レオンハルトが地図を見る。

「最初から分かれた方がいいですね」

「僕もそう思う」

 ルシアンが頷く。

「問題は組み合わせだ」

「俺とリリア」

 アレンが即答した。

「早い」

「突破力なら一番だろ」

「僕とリリアでもいいんじゃない?」

 ノアが笑顔で割り込む。

「お前は後ろ回れ」

「嫌ですよ」

「私とリリアなら、近距離と遠距離で対応できます」

 セシルまで加わる。

「アルヴェインまで?」

「合理的な提案です」

「顔が合理的じゃないけど」

 レオンハルトが笑う。

 カイルが地図を指した。

「三組に分けるなら、戦力を均等にしろ」

「じゃあクロフォード先輩と私?」

「なぜそうなる」

「先輩強いから」

「お前もだろう」

「じゃあ強い組」

「均等の意味分かってる?」

 ノアが突っ込む。

「もう面倒なのでくじ引き」

「遊びじゃないよ、リリア」

 ルシアンがため息をついた。

「僕が決める」

 全員が黙る。

「森林はセシルとノア。廃墟はアレンとカイル。水路はリリアとレオンハルト」

「何で俺がこいつと!」

「俺も聞きたい」

「仲良くしろとは言わない。勝ってきて」

「監督生雑じゃねえか!?」

「相性は悪くないよ。君が攻めてカイルが穴を埋める」

「俺が穴作る前提かよ」

「作るだろう?」

「……」

「否定しないんだ」

 セシルが笑った。

「私とノアは?」

「二人とも機動力が高い。セシルが前、ノアが広範囲索敵と補助」

「了解です」

「はーい」

「私たちは?」

 リリアが尋ねる。

「水路は足場が悪い。レオンハルトが指揮と防御、リリアが索敵と攻撃」

「了解」

「それからリリア」

「何?」

「水に落ちない」

「落ちない」

「本当に?」

「子供じゃない」

「昨日廊下で迷ってた子が言ってる」

「関係ない」

 レオンハルトが笑う。

「僕が見ておきます」

「お願いします」

「二人とも信用してない」

「してるよ」

 ルシアンは地図を畳んだ。

「ただし」

 声が少しだけ真剣になる。

「異常を感じた場合は、試合より安全を優先すること」

 全員の表情が変わった。

「黒い羽?」

 セシルが尋ねる。

「それに限らない。十二本の術式、十三本目の線、黒い光。何か一つでも似たものを見つけたら、監督生へ信号を送る」

「その場合、試合は?」

「棄権しても構わない」

 リリアが少し嫌そうな顔をした。

「勝ちたいのは分かるよ」

「まだ何も言ってない」

「顔」

「最近みんなそれ言う」

「分かりやすくなったんじゃない?」

 ノアが笑う。

 ルシアンはリリアを見る。

「勝つことより大事なことがある」

「分かってる」

「ならいい」

 その時、待機室の外で鐘が鳴った。

『午前第二試合参加部隊は、第一演習区画へ移動してください』

 全員が立ち上がる。

「行こうか」

 レオンハルトが言った。

 リリアは杖を手に取った。

「勝とう」

「ああ」

「もちろん」

「任せて」

「当然だろ」

「やる」

 五人の声が重なる。

 ルシアンは最後に告げた。

「行ってらっしゃい」

 リリアが振り返る。

「行ってきます」