魔法より、君に恋をする。

 最後の合同訓練は、これまでで一番静かだった。

 派手な魔法を撃ち合うこともなく、魔力量を限界まで使うこともない。

 明日の本番に疲労を残さないため、確認するのは配置と判断だけだ。

「救出戦で一番やってはいけないのは、敵部隊との戦闘に夢中になること」

 監督生用の高台から、ルシアンが説明する。

「目的は救助対象の確保。敵を全滅させても、救助数で負ければ敗北だ」

「アレン先輩」

 リリアが呼ぶ。

「何で俺見るんだよ」

「戦いそう」

「お前に言われたくねえ!」

「私はちゃんと目的覚えてる」

「俺も覚えてるわ!」

「二人とも同類だ」

 カイルが淡々と言う。

「お前まで言うのかよ!」

 ノアが笑う。

「じゃあ僕とセシルで二人を監視しようか」

「嫌」

「僕、リリア担当」

「じゃあ私はアレン先輩?」

 セシルが尋ねる。

「何で俺が一年に監視されんだ!」

「大丈夫ですよ。ちゃんと見てますから」

「そういう意味じゃねえ!」

「楽しそうだねえ」

 ルシアンが高台から言う。

「会長、止めてくださいよ!」

「チームワークが育っていて何よりだと思ってる」

「絶対面白がってんだろ!」

「もちろん」

「監督生!」

 笑い声が広がる。

 明日が本番だというのに、不思議と空気は軽かった。

 最初の訓練では、六人とも勝手に動いていた。

 リリアが少し前へ出れば、全員が追いかけてきた。

 今は違う。

 誰が何をできるのか、少しずつ分かってきた。

 アレンは突破力が高い。

 カイルは前線を崩さない。

 セシルは状況を見て必要な場所へ入れる。

 ノアはどこにでも合わせられる。

 レオンハルトは全体を見るのが上手い。

 そしてリリアは。

「何でもやる」

「それが一番困るんだよ」

 ルシアンに即座に返された。

「なんで?」

「役割表の君の欄だけ異常に長くなるから」

「書かなくていい」

「監督生としては書かせてほしいな」

 リリアは不満そうにした。

 その横で、レオンハルトが笑っている。

「何?」

「いや。君らしいなと思って」

「それ最近よく言われる」

「嫌?」

「嫌じゃない」

 レオンハルトの目が柔らかくなる。

「ならよかった」