魔法より、君に恋をする。

特別資料室は、学院の中央図書館のさらに奥にあった。

 一般の生徒が利用する閲覧室を抜け、職員用の通路を進んだ先に、古びた扉がある。

 ルシアンが銀色の札を扉のくぼみへ差し込むと、淡い光が走った。

「認証式?」

「そう。許可された人間以外が開けようとすると警報が鳴る」

「壊したら?」

「君には先に言っておくけど、絶対に壊さないでね」

「壊しません」

「魔晶石もそう言ってなかった?」

「あれは壊す前に会話してません」

「確かに」

 鍵が外れる音がして、重い扉が開いた。

 リリアは中を覗き込み、目を輝かせた。

「……すごい」

 通常の図書館とはまるで違う。

 天井まで届く書架が何列も並び、革張りの古い魔導書や、巻物、石板、保存用の魔法がかけられた紙束まで収められている。窓はなく、壁に設置された魔法灯が柔らかな光を放っていた。

「王国成立以前の資料もある。古代術式、失われた魔法体系、禁術指定された研究記録も一部保管されているよ」

「禁術も?」

「そこだけ食いつかないで」

「見たい」

「駄目」

「まだ何もしてません」

「目がしてる」

 リリアは不満そうにルシアンを見る。

「先輩、意外と細かいですね」

「生徒会長だからね」

「昨日は先輩だから秘密を教えないって言ってました」

「便利な言葉だろう?」

「ずるい」

「大人はずるいものだよ」

「十七歳ですよね?」

「……そうだった」

「自分の年齢忘れないでください」

 ルシアンが一瞬だけ妙な顔をした。

 けれどすぐにいつもの笑みに戻ったため、リリアも深く考えず、目の前の書架へ意識を戻した。

「それで、昨日の術式はどこにあります?」

「こっち」

 ルシアンが奥へ進む。

 今度こそ迷わないよう、リリアはその背中を追った。