魔法より、君に恋をする。

翌日の放課後。

「苺」

 終礼の鐘が鳴った瞬間、ノアが言った。

 リリアは鞄へ教科書を入れながら顔を上げる。

「覚えてる」

「確認」

「朝も聞いた」

「昼も聞いた」

「三回目」

「大事な約束だからね」

「苺が?」

「君と食べる苺が」

「同じじゃない?」

「全然違う」

 よく分からない。

 けれどノアが楽しそうなので、リリアはそれ以上追及しなかった。

「どこ行くの?」

「学院の西門近くに焼き菓子屋があるんだ。春限定で苺のミルフィーユが出てる」

「詳しい」

「昨日調べた」

「そこまで?」

「約束したから」

 さらりと言われる。

 昨日のノアを思い出した。

『怖くても、約束したいから』

 その時の顔と、今の嬉しそうな顔は少し違う。

 でも、どちらもノアなのだろう。

「じゃあ行こう」

「うん」

「リリア」

 セシルが呼ぶ。

「何?」

「今日は私、剣術科の訓練あるから先に行くね」

「分かった」

「またあとで」

「うん。また明日」

 そう答えると、セシルが一瞬だけ目を細めた。

「……うん。また明日」

 最近、この言葉をよく使う。

 以前は何も考えずに言っていた。

 今も、リリアにとっては普通の挨拶だ。

 けれどノアたちを見ていると、それを大切そうに受け取る人がいるのだと分かってきた。

「じゃあノア」

「はい」

「苺」

「行こう」