魔法より、君に恋をする。

陣形を組み直し、二度目の訓練が始まった。

 今度は最初から役割を決める。

 前衛はカイルとアレン。

 中央で全体を見るレオンハルト。

 左右を自由に動くノアとセシル。

 そしてリリアは、どこにも固定しない。

「右、三体!」

 レオンハルトの声が飛ぶ。

「見えてる!」

 アレンが一歩前へ出る。

 炎が地面を走り、二体をまとめて飲み込んだ。

 一体だけが炎を抜ける。

「カイル!」

 呼ばれるより早く、黒い影が動いた。

 カイルの剣が魔法獣の爪を受け止める。

 金属音に似た鋭い音が響いた。

「セシル!」

「任せて」

 横から踏み込み、露出した核を一閃する。

 光が散る。

「後方、五体」

 ノアが告げた。

「リリア、いける?」

「うん」

 リリアが杖を上げる。

 五つの魔法陣が同時に空中へ展開された。

「三秒」

「十分」

 ノアの風が敵の進路を狭める。

 一箇所へ集まった瞬間。

「今」

 光が落ちた。

 五体がまとめて消滅する。

「……楽」

 リリアが呟く。

「何が?」

 ノアが聞く。

「一人で全部見なくていい」

「それがチームだからね」

「なるほど」

「今さら?」

「初めてだから」

 ノアが一瞬だけリリアを見る。

 それから、柔らかく笑った。

「じゃあ覚えて」

「何を?」

「誰かに任せてもいいってこと」

 リリアは少し考えて、頷いた。

「覚えとく」

 その時だった。

 足元から、ごく微かな魔力の揺れを感じた。

「……待って」

 リリアが止まる。

「どうした?」

 レオンハルトがすぐに反応した。

「下にいる」

「下?」

「一体」

 次の瞬間、地面が爆発した。

 土煙とともに、巨大な魔法獣が飛び出す。

 予定にはなかった六体目。

「リリア!」

 誰かが呼んだ。

 けれど、今度は誰も無理に割り込まなかった。

 リリアが地面へ杖を向ける。

「《反転》」

 魔法獣の巨体が、まるで重さを失ったように空中へ持ち上がった。

「ノア!」

「了解」

 風の刃が脚部を切り裂く。

「セシル!」

「うん!」

 セシルが地面を蹴った。

 高く跳躍し、空中で身体を捻る。

 一閃。

 核が砕ける。

 着地したセシルのすぐ横へ、リリアが歩み寄った。

「今の格好よかった」

「……戦闘中だよ」

「終わった」

「そうだけど」

「リリア」

 後ろからカイルに呼ばれる。

「はい?」

「まだ終わってない」

 振り返る。

 カイルの指した先では、先ほど倒したはずの魔法獣の残滓が再び集まり始めていた。

「あ」

「集中しろ」

「はい」

「アルヴェインもだ」

「私もですか?」

「お前も止まってただろ」

「……はい」

 セシルが大人しく剣を構え直す。

 アレンが呆れたように息を吐いた。

「何やってんだ、お前ら」

「アレン先輩には言われたくない」

「俺はちゃんと戦ってただろ!」

「さっきレオン先輩と喧嘩してた」

「あれは喧嘩じゃねえ!」

「意見交換?」

「……そうだ」

「気に入ったんだ、その言い方」

 ノアが笑う。

「うるせえ!」

「来るよ」

 レオンハルトの一言で、全員の視線が前へ戻った。

 再形成された魔法獣が二体。

「左はアレンとカイル。右はセシル。ノアは補助。リリアは――」

「両方いける」

「だと思った」

 レオンハルトが笑う。

「じゃあ好きに暴れて」

「了解」

「それ、指示として正しいのか?」

 アレンが言う。

「リリアには一番分かりやすい」

「確かに」

 セシルまで同意した。

「私どういう扱い?」

「天才」

 ノアが答える。

「自由人」

 セシル。

「規格外」

 レオンハルト。

「無茶する馬鹿」

 アレン。

「危なっかしい」

 カイル。

「後ろ二人だけ悪口」

「事実だ」

「同意」

「あとで覚えてて」

「戦闘中に脅すな!」

 今度は、六人が同時に動いた。