魔法より、君に恋をする。

監督生用の高台から降りてきたルシアンは、手元の記録板を眺めながら六人の前に立った。

「まず、討伐数」

 記録板を指で弾く。

「学院の基準値の三・七倍」

「すごい」

 リリアが満足して頷く。

「じゃあ順調ですね」

「討伐数だけならね」

「嫌な言い方」

「連携評価は最低」

「……最低?」

 レオンハルトが聞き返した。

「最低」

「そんなに?」

「ここまで個人能力が高い六人を集めて、ここまで綺麗にばらばらなのは珍しいよ」

 ルシアンは楽しそうですらあった。

「アレンとカイルは前衛位置が被る。ノアは支援より先に自分で処理しようとする。レオンハルトは全体を見られるのに、自分で穴を埋めに行く。リリアは状況に応じて好き勝手に動く」

「好き勝手」

「褒めてないよ」

「セシルは?」

 リリアが尋ねる。

「一番まとも」

「やった」

 セシルが小さく笑う。

「ただし、周りに合わせすぎて自分の攻撃回数を減らしてる。君はもっと前へ出ていい」

「分かりました」

「私だけ褒められてない」

「リリアは個人評価なら満点に近いよ」

「じゃあいい」

「よくないから今話してるんだけど」

 ルシアンがため息をつく。

「それと、全員に共通している問題が一つ」

 記録板に表示された図を六人へ見せた。

 そこには、戦闘中の移動経路が線で記録されている。

 リリアの周囲だけ、異様に線が密集していた。

「……何これ」

「君を中心にした渋滞」

 リリアは図を覗き込む。

「なんで?」

「危険が近づくたび、誰かしら君の射線に入ってるから」

 アレンが顔をしかめた。

「こいつ、放っとくと前出るだろ」

「出ます」

「ほら」

「でもアレン先輩も前出る」

「俺は前衛だ」

「私はどこでもできる」

「それが面倒なんだよ」

「面倒って言われた」

「褒めてる」

「絶対違う」

 カイルが記録図を見た。

「配置そのものに問題がある。アステルを後衛に固定すればいい」

「嫌です」

「即答するな」

「後ろだけだと暇」

「戦場で暇を求めるな」

「カイルの案は安全だけど、リリアの強みを殺すね」

 ルシアンがさらりと否定した。

「彼女は固定しない方がいい。前衛、後衛、広域支援を状況に応じて切り替えられる」

 レオンハルトが図を見ながら頷く。

「なら、リリアを基準に陣形を組むのではなく、彼女が抜けても崩れない形にした方がいい」

「そう。それが一番近い」

「前二枚を固定するなら、僕が中央で指示を出そう。ノアは後方に置くより、左右を自由に動ける位置の方がいい」

「賛成。じっとしてるの苦手だし」

「セシルは?」

 リリアが聞く。

「遊撃かな」

 レオンハルトが答える。

「剣士だけど、アレンやカイルとは動き方が違う。状況を見て空いた場所に入ってもらった方がいい」

 セシルが少し考え、頷いた。

「それなら動きやすいです」

「お前、仕切るの慣れてんな」

 アレンがレオンハルトを見る。

「一応、王子だからね」

「関係あんのかよ」

「軍事教育も受けるから、多少は」

「へえ」

 リリアが感心してレオンハルトを見る。

「格好いい」

「……」

 レオンハルトの言葉が止まった。

「リリア」

「はい?」

「今は作戦会議だから、そういうのは後にしてもらえるかな」

「褒めただけなのに」

「分かってる。分かってるから困ってるんだ」

 耳が少し赤い。

 アレンが露骨に嫌そうな顔をした。

「お前、いちいち照れんな」

「君は照れないの?」

「照れねえよ」

「アレン先輩も名前で呼んだら照れた」

「おい」

「へえ」

 レオンハルトが笑う。

「何だよ」

「いや。意外だなと思って」

「ぶっ飛ばすぞ」

「はいはい、そこまで」

 ルシアンが記録板で二人の間を遮った。

「今のところ、僕の評価ではセシルが一番協調性が高い」

「ほら」

 セシルが少し得意げにリリアを見る。

「さすが」

「もっと褒めていいよ」

「格好いい」

「……それは今いらない」

「なんで?」

「なんでも」

 今度はセシルが視線を逸らした。

 ノアが隣で笑う。

「リリア、今日は調子いいね」

「何が?」

「いや、こっちの話」