魔法より、君に恋をする。

「ふざけんな」

 発表後。

 第十三部隊に指定された六人は、専用の作戦室へ集められていた。

 最初に口を開いたのはアレンだった。

「何が?」

 リリアが聞く。

「何がじゃねえ。なんだこの面子」

「強そう」

「お前はそれしか言わねえな」

「実際強いでしょ?」

「そういう問題じゃねえ」

「では、どういう問題かな?」

 レオンハルトが穏やかに聞く。

「お前と同じチームなのが気に食わねえ」

「それは残念だ」

「その余裕ある顔やめろ」

「生まれつきなんだ」

「絶対嘘だろ」

「仲悪い?」

 リリアが聞く。

「「普通」」

 声が重なる。

「仲良いね」

「どこがだ!」

 アレンだけが怒鳴った。

 レオンハルトは笑っている。

 カイルは壁際で腕を組んでいた。

「騒ぐな」

「お前もなんか言えよ、クロフォード」

「何を」

「この編成おかしいだろ」

「学院が決めた」

「だからその学院がおかしいっつってんだよ」

「変更したいなら教師に言え」

「変えるとは言ってねえ」

「じゃあ黙れ」

「てめえ――」

「アレン先輩」

「あ?」

「うるさい」

「……悪かったよ」

 素直に黙った。

 レオンハルトが目を瞬く。

 カイルも見る。

 ノアが笑いを堪えている。

「何だよ!」

「何でもないよ」

「笑ってんだろ」

「気のせい」

 セシルがリリアの隣で小さく笑った。

「まとまりそう?」

「たぶん」

「その自信どこから来るの?」

「強いから」

「またそれ」

 その時、作戦室の扉が開いた。

「楽しそうだね」

 ルシアンだった。

「ルシアン先輩」

 リリアが呼ぶ。

「……」

 六人のうち、何人かの表情が変わった。

「会長、何しに来た」

 カイルが聞く。

「監督役」

「は?」

 アレンが嫌そうな声を出す。

「各部隊には教員か上級生の監督が一人つく。今年、僕は生徒会長権限で第十三部隊の監督を担当する」

「自分で決めたんですか?」

 セシルが聞く。

「半分はね」

「残り半分は?」

 リリアが聞く。

「学院側の指名」

 ルシアンは笑った。

「つまり、十日間よろしく」

 リリアは部屋を見回した。

 ノア。

 セシル。

 アレン。

 レオンハルト。

 カイル。

 そしてルシアン。

「全員いる」

 ぽつりと言った。

「何が?」

 セシルが聞く。

「知ってる人」

「そりゃそうだろ」

 アレンが言う。

「いや」

 ノアの声が少しだけ低くなる。

「……確かに」

 リリアはノアを見る。

「何?」

「何でもない」

 いつもの笑顔に戻っていた。

 その向こうで、カイルとルシアンが一瞬だけ視線を交わす。

 アレンも気づいたようだった。

 レオンハルトだけは、静かに全員を見ている。

 誰も何も言わない。

 リリアだけが知らない。

 けれど、今までとは少し違った。

 以前なら、それがただ腹立たしかった。

 今は。

「まあいいや」

 リリアは椅子へ座った。

「十日あるんでしょ?」

「ああ」

 ルシアンが答える。

「じゃあ勝ちましょう」

「簡単に言うね」

「負けるつもりある?」

 リリアが一人ずつを見る。

 セシルが笑った。

「ないね」

 ノアも肩をすくめる。

「リリアが出るなら負けたくないかな」

「俺は最初からねえよ」

 アレンが言う。

「僕もだ」

 レオンハルトが続く。

 最後に、カイル。

「勝つ」

「決まり」

 リリアは満足そうに頷いた。

「じゃあ練習しよう」

「今から?」

 ノアが聞く。

「十日しかない」

「今日くらい休まない?」

「嫌」

「ですよね」

 セシルが立ち上がる。

「私は付き合うよ」

「俺も行く」

 アレンがすぐ続く。

「なら僕も」

 レオンハルトも立つ。

 カイルは何も言わず、すでに扉へ向かっていた。

「全員来るんだ」

 リリアが言う。

「お前が行くんだろ」

 アレンが振り返る。

「なら行く」

「同感だ」

 カイルが短く言った。

「僕も同じかな」

 ノアが笑う。

「私も」

 セシルが隣へ並ぶ。

 レオンハルトも微笑んだ。

「僕だけ残る理由もないね」

「じゃあ行こう」

 リリアは扉を開ける。

 ルシアンだけが、その背中を少し離れたところから見ていた。

 第十三部隊。

 偶然にしては、出来すぎている。

 魔力、属性、成績。

 学院側はそう説明した。

 けれど。

 この六人が選ばれ、自分が監督役に指定されたことを、ルシアンは偶然だとは思っていなかった。

 何より。

『第十三』

 その数字が、気に入らない。

「ルシアン先輩?」

 廊下からリリアが顔を出す。

「来ないんですか?」

「行くよ」

「早く」

「はいはい」

 ルシアンは歩き出した。

 まだ彼女には言わない。

 確証がないから。

 ただ一つだけ、昨日までとは違うことがある。

 何かが動き始めている。

 それでも今回は。

 過去と同じように彼女を囲って守るつもりはなかった。

 リリアが自分で戦うと言うのなら、その隣に立つ。

 それはきっと、自分だけではない。

 廊下の先。

 五人に囲まれながら歩く銀髪の少女が、何かを言って笑っている。

 その隣にはセシルもいる。

 過去を知らない彼女まで、当たり前のように。

「……面白いね」

 誰にも聞こえない声で呟いた。

 十三度目。

 もしこの数字に意味があるのなら。

 今度こそ、その意味さえ変えてしまえばいい。