魔法より、君に恋をする。

翌日の昼休み。

「じゃあ、行ってきます」

 リリアが席を立つと、セシルが弁当箱を開けながら顔を上げた。

「今日はルシアン先輩と食べるんだっけ?」

「うん。昨日約束した」

「どこで?」

「聞いてない」

「……大丈夫?」

「何が?」

「辿り着ける?」

「迎えに来るって」

「なら大丈夫だね」

 あっさり納得されてしまった。

「最近、私への信用なくない?」

「方向感覚に関しては最初からないよ」

「ひどい」

「リリア自身は信用してる」

「ならいい」

「いいんだ」

 ノアが隣で笑う。

「ところでさ」

「何?」

「僕には?」

「何が?」

「二人でご飯食べる予定」

 リリアは少し考える。

「今食べてるでしょ?」

「セシルもいるじゃん」

「嫌なの?」

「嫌じゃないよ。ただ、たまには僕も特別扱いしてほしいなって」

「ノアは毎日いるから」

「……」

 ノアが黙った。

「何?」

「それ、結構強いこと言ってるって分かってる?」

「毎日いるでしょ?」

「いるけど」

「じゃあ合ってる」

「そうなんだけどなあ」

 困ったように笑いながら、それでもノアは少し嬉しそうだった。

「じゃあ今度、二人で食べようよ」

「いいよ」

「やった」

「苺あるところがいい」

「僕との時間より苺優先?」

「両方」

「なら許す」

 その時、教室の扉が軽く叩かれた。

 何人かの生徒が一斉にそちらを見る。

「リリア」

 扉のところに立っていたのはルシアンだった。

 三年生の深紅の学年章。

 そして生徒会長。

 ただ迎えに来ただけなのに、一年生の教室が妙に静かになる。

「迎えに来たよ」

「ありがとうございます」

 リリアは鞄から財布を取り出した。

 後ろで女子生徒たちが小声で何か話している。

 最近、この程度では気にならなくなった。

「行ってきます」

「いってらっしゃい」

 セシルが手を振る。

「迷子にしないでくださいね、会長」

 ノアが言う。

「僕がいるのに?」

「リリアなら可能性あります」

「ノア」

「何?」

「あとで覚えてて」

「怖いなあ」

 笑うノアを置いて、リリアは教室を出た。