魔法より、君に恋をする。

 昼前になると、大通りはさらに混み始めた。

「リリア、こっち」

 人とぶつかりそうになったところを、セシルに腰のあたりを支えられる。

「ありがとう」

「今日はいつも以上に人が多いね」

「手繋いでるから大丈夫」

「そういう問題かな」

「迷子にはならない」

「それはそう」

 歩いていると、前から数人の少女がやって来た。

 学院の一年生だ。

 こちらに気づいた瞬間、全員が止まる。

「あ……」

「アルヴェイン様……?」

 セシルの表情がわずかに固まった。

「様?」

 リリアが隣を見る。

「気にしないで」

「でも今――」

「セシル様! こんにちは!」

 一人が意を決したように声をかけた。

「こんにちは」

 セシルはいつも通り爽やかに返す。

 少女たちは一気に頬を赤くした。

「きょ、今日は私服なんですね……!」

「うん。休日だからね」

「すごく素敵です!」

「ありがとう」

 リリアは黙って眺めていた。

 セシルが女子に人気なのは知っている。

 剣術部でもよく囲まれているし、《白銀の王子》と呼ばれていることも聞いた。

 けれど学院の外で見ると、改めてよく分かる。

 本当に人気なのだ。

 少女の一人がリリアを見る。

「アステルさんも一緒なんですね」

「うん」

「二人で?」

「そうだよ」

 答えたのはセシルだった。

 なぜか少し嬉しそうに見える。

「今日はリリアと二人で出かけてるんだ」

「……!」

 少女たちが互いの顔を見る。

「そ、そうなんですね……!」

「楽しんでください!」

「ありがとう」

 彼女たちが去っていく。

 少し離れたところから、「やっぱりお似合い」「すごい」「二人とも綺麗」と囁く声が聞こえた。

「お似合いだって」

 リリアが言う。

「聞こえてたの?」

「耳いいから」

「忘れて」

「なんで?」

「なんでも」

「セシル、顔赤い」

「今日は暑いね」

「そんなに暑くない」

「暑いの」

 分かりやすい。

 けれど何が恥ずかしいのかは分からない。

「白銀の王子」

「やめて」

「人気者」

「リリアだって同じでしょ」

「私は王子じゃない」

「お姫様って言われてるよ」

「じゃあやっぱりお似合い?」

「……リリア」

「何?」

「本当に、そのへんにして」

「はい」

 素直にやめた。

 セシルが深く息を吐いた。