魔法より、君に恋をする。

休日の朝、リリアはいつもより少しだけ早く目を覚ました。

 窓の外は晴れている。昨日まで降っていた雨が嘘のように空は青く、開けた窓から入ってくる風には、春らしい柔らかな匂いが混じっていた。

 ベッドから起き上がり、時計を確認する。

 待ち合わせまでは、まだ一時間以上ある。

「……早い」

 普段なら、もう少し寝ている。

 特別早く起きる理由なんてないはずなのに、なぜか今日は目が覚めてしまった。

 リリアはしばらくベッドの上でぼんやりしてから、昨日の朝にセシルと交わした会話を思い出した。

『せっかく二人で出かけるなら、普段と違うセシルも見たい』

 そう言った。

 なら、自分も制服ではない方がいい。

 クローゼットを開ける。

 学院へ来てから制服ばかり着ていたせいで、私服を選ぶこと自体が久しぶりだった。

「……これでいいかな」

 白いブラウスに、淡い紫色のスカート。薄手のカーディガンを羽織り、長い銀髪はいつもより少しだけ丁寧に梳かした。

 鏡を見る。

 悪くない。

 けれど何となく物足りない気がして、机の引き出しを開けた。以前買ったものの、ほとんど使っていなかった細い銀色の髪飾りが入っている。

 少し迷って、それをつける。

「……遊びに行くだけなのに」

 誰に言い訳しているのか分からない。

 それでも外す気にはならなかった。