「すまない、ユリア。俺のせいで寿命を縮めてしまった」
寝台で横になるユリアの枕元に椅子を置いて、それに座ってユーベルトは謝罪した。亜麻色の髪に緑玉の双眸をしたユリアは、うっすらと瞳を開いていた。浅い呼吸を繰り返し、青白い顔は死の影が見えるようだった。細い手を伸ばして、頭を下げるユーベルトの頬に触れた。雫が指先を濡らす。
「泣かないで下さいませ、ユーベルト様。わたくしは元々幼い頃より、二十歳まで生きられないと言われていたのです。それが、二年も伸びました。あなた様にとても愛されて幸せです。わたくしは先立ってしまい、あなた様を幸せにしてさしあげられません。わたくしのことは忘れて、再婚なさって、どうか幸せになってくださいませ」
「無理だ。俺が心の底から愛しているのはユリアだけだ。悲しいことを言わないでくれ」
刻一刻と命の灯火をか細くしていくユリアを前に、ユーベルトはなすすべなく、指を咥えていることしかできない。この時ほど、己の無力さを感じたこともなく、神とやらに縋ったことはなかっただろう。
二日後、ユリアは眠るように息を引き取った。それからは、ただ日々の執務に忙殺され、感情が追いつかないまま過ごしていた。それでも、溜まる性欲を城に常駐している性欲処理の為だけの女を抱いた。散々吐精しても、常に物足りなさが付き纏った。
喪も開けぬうちにガレリアとの大戦が勃発し、戦場で数々の死戦を越えるうちに、生きようとする己に気付き、本来の自分を取り戻していった。
ガレリアとの戦は、決着がつかないまま停戦となり、和睦が模索されるようになった。そして、ユーベルトはローズを娶ることになった。
再婚しても、ユリアを忘れることは出来ないと思っていた。けれどローズを抱くと、無我夢中になり、他の女では満たされなかった欲求が満たされるようになっていた。身体の相性も、美しい容姿も、乱れる姿も、声も、仕草も、受け答えも。ローズの何もかもに、ユーベルトは満たされた。
亡き妻を想っているつもりで、ローズに夢中になっている薄情な自分がいる。
ユリアの命日だというのに、魅惑的なローズに欲情していつもの如く激しく抱いてしまった。
ことを終えて我に帰り、寝台の端に座り、思わずローズにユリアの事を吐露していた。
(ああ、俺はユリアを想いながらも、ローズに溺れてしまったのだな。すまない、ユリア)
ユーベルトは、その日を境にローズを優しく抱くようになった。心に空いた穴を埋めるように、慰め、労り、気遣う。そんな日々が過ぎたある日、ユーベルトはローズにドレスを用意し、宣告したよりも随分と早くに寝室から出した。隣室の王妃の部屋を与え、王妃として扱ったのだ。
寝台で横になるユリアの枕元に椅子を置いて、それに座ってユーベルトは謝罪した。亜麻色の髪に緑玉の双眸をしたユリアは、うっすらと瞳を開いていた。浅い呼吸を繰り返し、青白い顔は死の影が見えるようだった。細い手を伸ばして、頭を下げるユーベルトの頬に触れた。雫が指先を濡らす。
「泣かないで下さいませ、ユーベルト様。わたくしは元々幼い頃より、二十歳まで生きられないと言われていたのです。それが、二年も伸びました。あなた様にとても愛されて幸せです。わたくしは先立ってしまい、あなた様を幸せにしてさしあげられません。わたくしのことは忘れて、再婚なさって、どうか幸せになってくださいませ」
「無理だ。俺が心の底から愛しているのはユリアだけだ。悲しいことを言わないでくれ」
刻一刻と命の灯火をか細くしていくユリアを前に、ユーベルトはなすすべなく、指を咥えていることしかできない。この時ほど、己の無力さを感じたこともなく、神とやらに縋ったことはなかっただろう。
二日後、ユリアは眠るように息を引き取った。それからは、ただ日々の執務に忙殺され、感情が追いつかないまま過ごしていた。それでも、溜まる性欲を城に常駐している性欲処理の為だけの女を抱いた。散々吐精しても、常に物足りなさが付き纏った。
喪も開けぬうちにガレリアとの大戦が勃発し、戦場で数々の死戦を越えるうちに、生きようとする己に気付き、本来の自分を取り戻していった。
ガレリアとの戦は、決着がつかないまま停戦となり、和睦が模索されるようになった。そして、ユーベルトはローズを娶ることになった。
再婚しても、ユリアを忘れることは出来ないと思っていた。けれどローズを抱くと、無我夢中になり、他の女では満たされなかった欲求が満たされるようになっていた。身体の相性も、美しい容姿も、乱れる姿も、声も、仕草も、受け答えも。ローズの何もかもに、ユーベルトは満たされた。
亡き妻を想っているつもりで、ローズに夢中になっている薄情な自分がいる。
ユリアの命日だというのに、魅惑的なローズに欲情していつもの如く激しく抱いてしまった。
ことを終えて我に帰り、寝台の端に座り、思わずローズにユリアの事を吐露していた。
(ああ、俺はユリアを想いながらも、ローズに溺れてしまったのだな。すまない、ユリア)
ユーベルトは、その日を境にローズを優しく抱くようになった。心に空いた穴を埋めるように、慰め、労り、気遣う。そんな日々が過ぎたある日、ユーベルトはローズにドレスを用意し、宣告したよりも随分と早くに寝室から出した。隣室の王妃の部屋を与え、王妃として扱ったのだ。
