母国の恋人を想いながらも、嫁いだ敵国の王に溺愛されてしまいました

「本当に宜しかったんですか?」

 ルビオは立ち上がると、副団長のリナ・カーチェスを強く抱きしめた。

「お前、俺の事好きなんだろ?」

「えっ、えっ、バレてたんですかっ!?」

 ルビオは慌てるリナを強く抱きしめる。

「バレバレだ。今夜、慰めてくれると有り難いんだがな」

「今夜だけではなく、ずっとお傍にいます」

 リナは三年前に、カレイズ王国最強精鋭騎士団の副団長に就任した実力者だ。そして、苦楽を共にしてきた仲間だ。今はまだ、大切な部下としか思えない。

「ありがとう」

 抱き続けてきたローズへの想いは消えていくだろう。それを寂しく思うが、いつかリナへの想いが本物になる時がくる。そう信じたい。




 バハロ王国の王都は落ち、国王夫妻は逃亡。カレイズ王国に敗戦したバハロ王国は征服された。

 ローズと命からがら逃れたユーベルトは、小さな村を転々としながら傷を癒した。その間に、ローズは出産した。蜂蜜色の髪にユーベルトと同じ紫水晶の双眸を持つ美しい男児だ。
 二人は名前を変え、バハロの南の隣国で中立国のスロエに移り住むことにした。スロエは周辺諸国からの移民が多く、紛れて生活するには打ってつけだった。また、数カ国語を習得している二人は言語にも困らない。そこで、商業ギルドを立ち上げた。

 帰宅したユーベルトが、第二子の生後三ヶ月になった娘を抱いてあやす。ローズはその合間に夕食作りをしている。

「平民にさせてしまったな、すまない」

 ローズは微笑んで、出来た料理を皿に盛り付けていく。

「後悔はしていません。あなたと子供達に囲まれて幸せです。だから、謝らないで」

「俺も幸せだ、ありがとう」

 ユーベルトも穏やかに笑った。