君のいない明日を、今日。

家を出て、いつもの通学路を歩く。

学校へ向かう途中に、小さな神社がある。

私は毎朝、そこに立ち寄っていた。

鳥居をくぐり、賽銭箱の前で足を止める。鈴を鳴らして、そっと手を合わせた。

「……今度こそは、どうか……」

目を閉じたまま、しばらく祈る。

それから小さく息を吐き、神社をあとにした。

少し歩いたところで、前から見慣れた人影が見えた。

「あ、田中さん」

町内会長の田中さんだった。

「おはようございます」

「おう、おはよう。今日も早いねぇ」

いつものように挨拶を交わし、そのまま通り過ぎようとしたときだった。

「あっ、田中さん」

ふと思い出して、振り返る。

「薬、飲んだ?」

「……あ!」

田中さんが目を丸くした。

「忘れてた」

「もう、いつも忘れるんだから」

「いやぁ、忘れたことなんてないんだけどなぁ」

田中さんは頭を掻きながら、困ったように笑った。

「最近、ちょっとボケてきたのかなぁ」

「もう、気をつけてよー」

「ははは。気をつけるよ」

田中さんに手を振って、また歩き出す。

しばらくすると、今度は前からりほが走ってきた。

「おはよー!」

「おはよう。……って、どうしたの? そんなに急いで」

「朝、慌てて家を出てきちゃって……」

りほは息を切らしながら、困ったように笑った。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫!」

そうだ、今日体育あるんだ。

「体操服! 持ってきた?」

「えぇ? 多分...」

りほはかばんを漁る。

「ない...!!どうしよう...」

「今ならまだ間に合うよ。急いで取りに帰りな?」

「でも、もう時間が……」

「大丈夫。先生には私から言っておくから」

「ほんと!?」

「うん。急いで!」

「ありがと! じゃあ、行ってくる!」

友達は来た道を走って戻っていった。

私はその背中を見送りながら、時計を見る。

うん。まだ、間に合う。

また学校へ向かって歩き出した。